永遠の仔1  


 2013.6.5      正体の見えないトラウマ 【永遠の仔1】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

三人の少年少女が、山で何かしらのことを実行にうつす。本作では、何をやったのかは描かれていない。17年後、成長した子供たちが再会する。子供時代のトラウマが元となり、何かしらの事件を起こしたのだろうが、相変わらず作者の作品は、人の心の奥底にある闇を描くのがすさまじくうまい。

なぜそのような闇を抱えるようになったのか。今はまだこの三人のキャラクターの全容は見えてこない。それでも、何かしら、いびつなものは感じてしまう。まっとうな生活を送っているようだが、心に深い闇を抱える大人たち。普通の人では感じることのできない、根の深いトラウマの物語は、読む人に強烈な印象を植え付けるだろう。特別トラウマのない自分が読んでも、心の中をえぐられるようなインパクトがある。

■ストーリー

霊峰の頂上で神に救われると信じた少女・久坂優希と二人の少年は、下山途中優希の父を憑かれたように殺害する。十七年後、再会した三人を待つのは……。

■感想
物語の序章として、メインのキャラクターである子供たちのターニングポイントが描かれている。三人で山に登り、いったい何が起きたのか。それがのちに三人の足かせとなるのだろうが…。なぜ三人がその後離れ離れとなり、連絡を取り合わなかったのか。

それぞれが社会的にまっとうな大人となっても、なぜ会おうとしなかったのか。過去の事件が現在にどのような影響をおよぼし、またそれをほじくり返すような存在がでてくるのだろうか。子供時代の事件をきっかけとして物語が広がっていくのは、ちょうど東野圭吾の「白夜行」のようだ。

ある子供は、やり手弁護士となり、ある子供は刑事となる。そして、ある少女は看護士となる。三者三様、それぞれの道を歩みながらも、トラウマを晴らすことができない。それぞれにいったいどんなトラウマがあり、どのようにしてそのトラウマが植え付けられたかは、まだ本作ではわからない。

そのトラウマのせいで、弁護士はひたすら金を稼ぐことに終始し、刑事は児童虐待に対して強烈なまでの怒りを犯人にぶつける。女は自分の体を痛めつけるように、ひたすら仕事をし続ける。痛々しいまでの三人にどのような過去があるのか、興味がつきることはない。

メインの三人以外にも、周りのキャラクター描写がとてつもなく細かい。作者の物語全般に言えることだが、このキャラクターが成り立つ要因として、幼少時代からしっかりとした設定が出来上がっているのだろう。どんなキャラに対しても、そうなる理由がしっかりと語られている。

今後、単純に過去の事件の話だけでは終わらないのだろう。作中には陰惨な事件も起こるだろうし、過去のトラウマの描写では、子を持つ親として目をそむけたくなるような場面もあるかもしれない。そうであっても、止められず、物語の先を読んでみたい気分にさせる力がある。

メインのキャラクターのトラウマの原因が何なのか、気になって仕方がない。




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