白夜行


 2011.12.13  ドラマ版を超えた面白さ 【白夜行】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
東野圭吾の名作を映画化。ドラマ版もよかったが、本作はさらによかった。コンパクトながらも白夜行の良さが十分に表現されている。ドラマ版よりも、よりミステリーに重点をおいているようで、原作を未読の人には、この仕組みには驚くことだろう。全体的に陰鬱な雰囲気がただよい、暗く悲しい物語だ。主演の堀北真希の演技がすばらしく、顔立ちに似合わず冷たい演技がしっくりきていた。刑事役の船越英一郎が物語りをさらにすばらしいものに仕立て上げている。もともと船越英一郎は2時間ドラマの刑事役のイメージがあるので、この役はぴったりだ。長大な原作をどのようにしてコンパクトにするのか、かなり気になる部分だったが、過不足なくうまくまとめられている。

■ストーリー

19年前の密室殺人。容疑者の娘と被疑者の息子。粉々に砕けたパズルのピースがはまる時、刑事は何を見るのか-密室となった廃ビルで、質屋の店主が殺された。決定的な証拠がないまま、事件は被疑者死亡によって一応解決をみる。しかし、担当刑事の笹垣(船越英一郎)だけは腑に落ちない。容疑者の娘で、子供とは思えない艶やかさを放つ少女・雪穂と、被疑者の息子で、どこか暗い目をしたもの静かな少年・亮司の姿がいつまでも目蓋の裏を離れないのだ。やがて成長した雪穂(堀木真希)と亮司(高良健吾)。全く面識のないはずのふたりの周辺で、不可解な事件が続発する。そして刑事退職後も真相を追い続ける笹垣自身も命を狙われ、ついに思いに至るのだった。19年前の驚愕の真実と、そこで結ばれた固い絆の存在に・・・。

■感想
この原作を映像化するのは難しいだろうと、原作を読んだときに思った。その気持ちは、ドラマの第1話をみて覆されたが、映画版を見てさらに衝撃を受けた。2時間強の短時間に、白夜行の面白さがすべて詰まっている。本来ならはしょられているはずの、いくつかのエピソードのことを忘れるほど、しっくりとはまっている。まるで原作自体がこの映画のエピソードで成り立っていると思わせるほどの安定感だ。ポイントになる人物を絞り込み、よけいな人物は登場させない。さらには巧みな演出で、物語の暗く悲しい雰囲気をさらに盛り上げている。

本作に登場する俳優たちの、どこか古臭い見た目も効果的だ。現代の映画とは思えないほど、でてくる俳優たちの顔つきが古臭い。おそらくそうなるように仕向けているのだろうが、何も言われなければ、20年前の映画だと言われても信じてしまうかもしれない。映像的にも、全体的にざらついた映像にし、奇妙で危険な風景が作り上げられている。観衆はある一つの流れを想像するが、なかなか決定的な事実が登場してこない。モヤモヤしたまま物語は進み、最後には刑事の独白の形で、おぼろげながら事件の全容が明らかとなる。原作を未読の人はきっと衝撃を受けるだろう。

原作では頭の中で想像し、ドラマはソフトな映像で濁していた部分も、映画ということで惜しげもなく表現している。そこまでリアルにする必要があるのかという場面でさえも、映像化し、そのことで物語の異常さや残酷さを表現している。ただ、結末へ近づくにつれ、異常であればあるほど、比例するように強烈な献身というか、愛を感じずにはいられない。異常な物語ではある。その異常さを映像としてここまで表現できるのは、なかなかないだろう。ドラマ版よりもコンパクトにまとまっているだけに、衝撃も数珠繋ぎに押し寄せてくる。

映画化を知り、なんでいまさらと思ったが、見る価値はある。



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