別冊 図書館戦争2 有川浩


2012.11.15    脇役キャラの恋愛成就 【別冊 図書館戦争2】

                     
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■ヒトコト感想

前作の別冊1は堂上と郁の痒くなるような恋愛物語だったが、本作は脇役たちの恋愛をメインに描いている。本編ではあまり印象のない副隊長である緒方が、過去に戻れるなら戻りたい恋愛を語る。ほかにも柴崎のそのキャラには似合わないような恋愛もある。堂上と郁ばかりに目が行きがちだが、その他のキャラも立派に恋愛しているということなのだろう。特に柴崎は、郁が結婚したあとどうなるのかということが、ドラマチックに描かれている。相変わらず女性が心の中で思う辛らつな言葉と、すぐさま思考する数々の想像力に驚かされる。世間の女性はみな本作の柴崎のように、瞬間的にあらゆることを考えているのだろうかと、恐ろしくなったりもする。

■ストーリー

“タイムマシンがあったらいつに戻りたい?”という話題で盛り上がる休憩中の堂上班。黙々と仕事をしている副隊長の緒形に、郁が無邪気に訊くと、緒形は手を休め、遠くを見つめるように静かに答えた―「…大学の頃、かな」。未来が真っ白だった無垢な時代。年をとるごとに鮮やかさを増す、愛しき日々。平凡な大学生であった緒形は、なぜ本を守る図書隊員となったのか!?過去と未来の恋を鮮やかに描く、シリーズ番外編第2弾。

■感想
別冊ということで、軍隊的な要素はほぼない。脇役たちの恋愛エピソードを描き、本編ではイマイチ幸せになれていないキャラたちの補完的意味合いが強いのだろう。本編ではほとんど日の当たらなかった副隊長である緒方の過去の恋愛から始まり、恋愛強者的なイメージがありつつ、本編ではひとりを貫きとおした柴崎。そして、最後まで一歩踏み出せなかった手塚。それらのキャラたちにある程度の決着をつけている。メインのキャラ以外にスポットを当てることを目的とした物語だ。

本編では、地味でそれほど印象に残らないキャラである緒方。特殊な出自と、図書隊に入る前に付き合っていた彼女との関係。過去の後悔を背負いつつ現在の仕事に従事する男の、なんだか哀愁漂う雰囲気を感じたのは気のせいだろうか。隊長である玄田のキャラと比べると、あまりにインパクトがなかっただけに、本作で一気に注目度が増している。順当に行けば出世していくのは間違いないという流れなので、もしこのシリーズの続編がでるならば、隊長として活躍するキャラなのだろう。

柴崎と手塚に関しても決着がつけられている。柴崎へのストーカー騒動から始まり、同部屋に生真面目な同期がくるなど、イベントにはことかかない。柴崎メインと言ってもよいのかもしれないが、手塚の存在抜きに、本作は語れないだろう。本編ではある程度良い感じになったが、決定的な言葉はないまま終わっている。それが、本作の様々な出来事によって、ある決着がつく。美男美女、知能の高い二人というのは、読んでいて感じていたのは、くっつくキャラではないという印象だった。それが、まさかの…。

このシリーズに続きはあるのだろうか。続けようと思えばいくらでも続けられそうだが…。続きを読んでみたい作品だ。



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