2012.10.22 ベタベタのアマアマ 【別冊 図書館戦争1】
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■ヒトコト感想
図書館戦争シリーズの堂上と郁の恋愛物語。付き合いたてのカップルが思うことから始まり、ある程度の時間が経過すると、二人の関係はだんだんと進展していく。こう書くと、ありきたりな恋愛小説のように感じるかもしれないが、中身は大違いだ。まず基本として二人は図書隊で上司と部下の関係にある。方や堅物の男、方や空気の読めない自由奔放な女。軍隊的な要素と恋愛を絡めることで、作者独特のニヤニヤしてしまう展開に拍車がかかっている。郁が恋愛経験がなく奥手というのが、ほほえましくもある。まるで付き合いたての高校生のような行動をしたかと思うと、変な部分で耳年間だったり。定番かもしれないが、変に意識してギクシャクした関係というのは、読んでいてニヤニヤしてしまう。
■ストーリー
『図書館戦争』スピンアウト・別冊シリーズ第一弾!武闘派バカップル恋人期間の紆余曲折アソート!
■感想
図書館革命後の堂上と郁の恋愛模様を描いた作品。お互い寮に住んでいるので、いちゃいちゃできないことに不満を募らす。ごく普通の恋愛小説のようだが、根本には図書隊という、ある種の軍隊組織に属してる二人だけに制限が多い。このあたりは、作者の得意分野で、他の小説でも自衛官同士の恋愛というのを興味深く描いていた。図書隊という架空の組織を扱うということで、好き勝手にできるのだろう。恋愛小説として、お膳立てがすぎる舞台が用意されている。
堅物な上司と奥手な部下。二人の恋愛を描くには、周りからちゃちゃが入ることが欠かせない。特に、恋愛に対して聡い柴崎や、恋愛に対して鈍感な手塚など、郁の周りには、恋愛物語を面白くする要素が詰まっている。30代の男と20代中盤の女にしては、あまりに進展が遅いのでは?と思えてくるが、不自由な環境と、奥手な郁の存在が、恋愛物語をより盛り上げている。恋愛期の、相手のことを気遣うということが、これでもかと表現されているのも特徴だ。そして、キャラクターが想像した言葉が直接響いてくるのは、作者の特徴かもしれない。
堂上と郁の恋愛がどうなっていくのか。図書館戦争シリーズの軍隊的部分を期待した人には、少し物足りないかもしれない。また、他のメインキャラクターたちのエピソードを期待した人にも同様だ。ほぼ全てが堂上と郁のバカップル話なので、恋愛小説が苦手な人は読まないほうが良いだろう。当然、今までのシリーズを読んでいなければ、二人の関係の機微を感じとることはできない。なにも事前知識なしに本作を読むと、もしかしたら変に気持ち悪いベタベタの恋愛小説と感じてしまうかもしれない。シリーズを読んでいることが必須だ。
図書館戦争シリーズの軍隊部分が苦手な人でも、十分楽しめる作品だ。
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