Arknoah 1 僕のつくった怪物 乙一


2013.9.29     ブレイブストーリー風な流れ 【Arknoah 1 僕のつくった怪物】

                     
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■ヒトコト感想

同級生たちからイジメを受けていた兄弟のアールとグレイ。迷い込んだ不思議な世界で、自分たちの心が作り出した怪物と出会う。現実の世界で不遇な扱いを受け、不思議な世界に迷いこむパターンは、宮部みゆきの「ブレイブ・ストーリー」を思い出した。ただ、ブレイブ~よりも衝撃度は少ない。

ブレイブ~が親の離婚など、子供にとってどうしようもない状況に比べ、アールとグレイの兄弟はイジメを受けているだけだ。兄弟の心が作り出した怪物は、兄弟の怒りや復讐の気持ちが強く影響しているのだろう。不思議な世界で怪物を倒すための冒険を続けることで、兄弟が成長していくのは容易に想像できた。今後続いていくであろうシリーズとしては上々のすべりだしか。

■ストーリー

父親を亡くした兄弟・アールとグレイ。2人は不思議な世界『アークノア』に迷いこんでしまう。そこで2人は出会う、自らの心の影から生まれた恐ろしい『怪物』と…。

■感想
兄弟がまぎれ込んだ世界は特殊だ。人が死んでも煙になり消えるだけ。次の日には死んだ日の記憶がない状態で同じ場所に復活する。まるでゲームのような世界だが、いくつかの制約条件がある。それは、怪物を倒さなければ元の世界に戻れないこと。

兄弟が死ねば、それぞれが生み出した怪物は消えるということ。不思議な世界の住人で、唯一訪問者を殺すことができるハンマーガール。絶妙な制約により、怪物たちは自分の創造主を守ろうとし、ハンマーガールが兄弟を殺すかもしれないという恐れもある。ちょっとした神経戦の様相だ。

怪物が大っぴらに姿を現しているとは限らない。グレイが生み出した怪物の巨大な猿のように、町を壊し続けるのか。アールが生み出した怪物のように人間の姿に化け、なりをひそめるのか。大猿のような単純な怪物であれば対策のしようがある。

本作では、大猿退治に様々な趣向をこらし、罠を作り、作戦を成功させようとする。対してアールが生み出した怪物はやっかいだ。姿をかくし、自分を生み出したアールをハンマーガールから守ろうとする。この相対的な怪物の背景の違いも本作の面白さの一部だろう。

本作では完結しない。続編があるのだろう。イジメられっ子の少年たちが、不思議な世界での冒険を経験し成長する。ありがちなドラマだが、今のところイジメから抜け出すほど特別大きな経験をしたようには感じられない。というよりも、まだまだ不思議な世界には秘密がありそうだ。

兄弟の父親が実は不思議な世界アークノアに来ていたという衝撃。父親はどのように変わったのか。新たな怪物が登場し、不思議な世界へ何かしら問題を抱えた子供がやってきたのだろう。流れ的にはまさいく「ブレイブストーリー」とかぶってしまう。

続編がどのような物語になるか、気にならずにはいられない。



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