青い鳥


 2013.8.27     イジメとは何か? 【青い鳥】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作は村内先生をメインとした短編集だが、本作はひとつの短編を映画化している。原作で感じた印象そのままに、主演の阿部寛が吃音教師を好演している。吃音なだけに、あまり多くは語らない。が、語る言葉のひとつひとつはとんでもなく重い。作品全体として、無駄なセリフがいっさいない。というか、セリフが少ない。代わりに登場人物たちの心情を表現しているのは、その表情や動作やまわりの景色だ。そのため、誰が見てもわかりやすい物語ではない。

明確な結論が出ていないことに不満を感じる人もいるかもしれない。イジメをテーマとした作品としては、イジメが悪い。とそれだけ結論づけて終わりでは何の意味もない。本作をイジメ撲滅のための、学校の教材にすればいいかもしれない。

■ストーリー

前学期、いじめられていた一人の男子生徒 野口が起こした自殺未遂で東ヶ丘中学校は大きく揺れていた。新学期初日、そんな2年1組に一人の臨時教師が着任してくる。村内という男性教師の挨拶に、生徒たちは驚く。彼は、吃音だったのだ。

うまくしゃべれない村内は、その分“本気の言葉”で生徒たちと向かい合う。そんな彼が初めて生徒に命じたのは、倉庫にしまわれていた野口の机と椅子を、教室の元の位置に戻すことだった。そして毎朝、その席に向かって「野口君おはよう」と声をかけ続けた。

■感想
イジメをテーマとした作品では、イジメのシーンをセンセーショナルに表現し、強烈なインパクトを残す作品もある。本作は、イジメシーンはほとんど登場しない。というか、イジメがあったことさえ、曖昧なまま物語が進んでいる。イジメをされる側もする側も問題がある、なんてことはよくある流れだ。本作は明確に誰が悪いだとか誰が良いというのを決めていない。

イジメがあったという事実を受け入れ、それに対して村内という教師がどんな行動をとったのかが淡々と描かれている。普通に考えれば、同僚教師が思うように「この人は頭がおかしいのか?」と思ってしまうような行動ばかりだが…。

村内が吃音というのもポイントだ。吃音でありながら国語の教師である。当然、本を読むこともある。吃音でつまりながら話をする教師なんてのは、正直いうと教師に向いているとは思えない。それでも、村内の言葉には迫力がある。

吃音だからこそ、多くは語らない。だからこそ、ぼそりとつぶやく言葉というのは、何よりも重い。他人が真剣に話をしている時は、自分も真剣に話を聞かなくてはならない。吃音教師が言うからこそ、その意味は大きい。生徒や同僚教師たちの、目を丸くする表情が、何よりそのことを物語っている。

本作はセリフが極端に少ない。そのため、イジメの詳細がわかるのはずいぶん後になってからだ。セリフが少ない代わりに、登場人物たちの心の葛藤は、その表情としぐさで伝わってくる。無駄なセリフがいっさいない。そして、無駄なシーンもない。必要最低限の表現だけで、村内の心の内を表現している。

当たり前に展開される「イジメは悪いこと」に警告を与えている。反省文を5枚書こうが、そこには何の意味もない。ということを村内は行動で示す。イジメが起きた場合に、誰もが考えそうな反省など意味がない。逆に村内が満足するレベルは相当ハードルが高い。

イジメはダメだ、なんていう簡単な答えですまされる作品ではない。



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