あなたの知らないガリバー旅行記 阿刀田高


2012.8.20   ガリバー旅行記の特異な面白さ 【あなたの知らないガリバー旅行記】

                     
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■ヒトコト感想

「ガリバー旅行記」は、子どものころに読んだことがある。おぼろげながらの記憶に間違いはないのだが、作者の要約と面白い解説付きであればより面白く感じてしまう。ガリバー旅行記が、これほど面白い作品だったのかと驚かずにはいられない。今までの「ギリシャ神話を知っていますか」や「アラビアンナイトを楽しむために」と比べても格段に面白い。何よりわかりやすく、なじみやすい。ガリバーが小人の国へ行ったり、巨大人の国へ行ったり、はたまた馬が高い知能を持つ国へ行ったり。本来は子ども向けではなく、大人向けの作品だろうと思わずにはいられない。さらには、作者であるスウィフトの他作品の話も面白い。そんな中、特に興味深いのは「家畜人ヤプー」の部分だ。本編とははなれた話だが、強烈すぎる。

■ストーリー

『ガリバー旅行記』はどなたもよくご存知でしょうが、作者スウィフトの人物像や当時のイギリスを知らないと、諷刺、洒落、ブラック・ユーモアなどは十分に理解できないところがあります。豊富な薀蓄を駆使して、その桁はずれの面白さを分かり易く解説・紹介したのがこの本です。

■感想
ガリバー旅行記は誰もがなんとなく知っているだろう。ガリバーの乗る船が嵐に巻き込まれ、たどり着いた先が小人の国であったり、巨人の国である。子どものころに読んだイメージとほとんど変わらないのだが、本作を読むとより面白く感じてしまう。作者の的確な解説と、ユーモア溢れるうんちくは「ガリバー旅行記」を何倍にも魅力的なものへと作り変えている。本作を読むと、子ども向けではなく原書を正しく翻訳したガリバー旅行記を読んでみたくなるだろう。

ガリバー旅行記の作者であるスウィフトの、他の作品についての解説もある。本編とは直接関係ないのだが、ガリバー旅行記に影響された日本人が書いた作品まで紹介されている。それが「家畜人ヤプー」という作品なのだが、これが強烈なインパクトがある。二千年後の未来では、黄色人種が白人のために体を改造され、道具にされてしまう話だ。かなり古い作品のようだが、作者の解説を読むと、グロテスクでちょっと引いてしまうが、興味はわいてくる。何より、スウィフトの作品ではないが、本作の中で一番インパクトのある作品であることは間違いない。

スウィフトの他作品についての解説もある。社会を風刺した作品や、ブラック・ユーモアやさらには、召使がいかにして主人から仕事の依頼をさぼるかについて書かれた作品もあるらしい。捻くれたスウィフトの真のモチーフを的確に解説する本作では、それらのブラックな物語の真の理由も語られている。正直、スウィフトという作家についてまったく知らなかった。興味もなければ、作品を読もうとすら思わない。が、本作を読んだことで俄然興味がわいてきた。もしかしたら、探し出して読んでしまうかもしれない。

作者のこの手の作品の中ではピカイチの面白さだ。



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