2012.6.6 マニアックなアラビア物語 【アラビアンナイトを楽しむために】
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■ヒトコト感想
アラビアンナイトと言われて何を思い出すだろうか。「アリババと40人の盗賊」や「シンドバッドの冒険」などは有名だが、内容はほとんど覚えていない。子どものころに絵本で読んだ記憶がある程度だ。そんな状態なので、本作に登場する物語はすべてが新鮮だった。恐らくほとんどの人が初めて味わう物語だろう。といっても、どこかで聞いたことのある物語もある。恐らくはアラビアンナイトが元なのだろうが、数々の物語に引用されてきたというのがよくわかる。作者の「ギリシャ神話を知っていますか」よりも読みやすく、理解しやすい。シンプルで、美男美女たちがお互いを求め合うことばかりが続くが、昔ながらの物語らしい安心感がある。
■ストーリー
今は昔、ササン朝ペルシャはシャーリャル王の御代。大王は夜ごとに処女を求めて夜伽をさせ、朝が明けると殺す、という日々を過ごしていた。そこに現われたのが大臣の娘シャーラザッド。彼女は妹とともに王の寝所におもむき、王の枕辺でたぐいまれな物語を語った…。奇想溢れる千夜一夜の物語を題材に、さまざまな人間模様を「奇妙な味」で味つけした阿刀田流やさしい古典読本第2弾。
■感想
千夜一夜物語りの通称であるアラビアンナイト。その中で有名な物語は、絵本やアニメになっているので、知っている人も多いことだろう。ただ、詳細なストーリーが語れるかというと、厳しいかもしれない。本作ではそんなアラビアンナイトの物語を、作者がわかりやすく翻訳してくれている。さらには、作者独自の解釈で、物語として心に残るようなオチまでつけてくれている。作中で作者は、アラビアンナイトは小説としては未熟だと語っているが、シンプルでわかりやすい物語は、十分楽しんで読むことができた。
王の枕元で語った物語の数々。夜に語られるにふさわしい内容ばかりだ。ほとんどの物語が、男と女、もしくは貧乏か金持ちかがポイントとなっている。登場人物たちも、美男美女ばかり。出合ってすぐに相手のことを気に入り、肉体関係になる。とりわけ、女性のあつかいはただの物であり、偉い王様が気に入った男には、自分の娘を簡単に嫁にやる。となると、女の反発がありそうなものだが、相手の男が美男であるために、あっさりと受け入れる。基本的に男女関係は、スムーズなのが物語りの特徴だろう。
昔話としては、なんらかの教訓じみたオチがあるのかと思いきや、そうではない。作者が気を利かせて、独自のオチを付け加えなければ、尻切れトンボのような物語もある。人の人生は運で決まるのか、それとも実力か、なんてことも、それぞれどちらともとれるような結末であり、結局はどういう結末なのかはっきり明言しないまま終わっている。これが悪いとは言わないが、作者の解説がないと、何が言いたいのか意味不明な作品だっただろう。
マジメに原書を読まなくとも、本作で十分アラビアンナイトのエッセンスは理解できるだろう。
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