赤目姫の潮解 森博嗣


2013.9.14     一見さんお断り 【赤目姫の潮解】

                     
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■ヒトコト感想

率直な感想としては「よくわからない」としか言えない。作者らしいといえばらしいが、作者の今までの作品よりもさらに尖がった作品となっている。連作短編集なのだが、そこに明確な繋がりはない。同じキャラクターが登場するが、まったく別人として別の世界の出来事を語る。この不可思議さと小難しさは作者の作品ならではだろう。

読み慣れている自分であっても、戸惑った。砂で描く曼荼羅や移動する湖。突如襲いかかる川。人間は実は神のような存在に操られている、操り人形でしかない。ひとつの短編が終わると、次はまったく別の世界が登場する。この移り変わりの速さについていくには、何度も読み込むしかないだろう。かなりハードルが高い作品だ。

■ストーリー

赤い瞳、白い肌、漆黒の髪をした赤目姫。彼女の行く先々で垣間見える異界……。思考の枷、常識の枠をやぶることが出来るものだけが、受容できる世界。そしてその世界に存在する自由と心理。透徹なイメージと魅惑的な登場人物で構築された哲学的幻想小説。

■感想
森博嗣作品を読み慣れている人にのみおすすめの作品。一見さんお断りの雰囲気があふれている。哲学的であり、幻想的でもある。聖書のようでもあり、宗教色が強くもある。普通の物語を想像していると、痛い目を見るのは確実だ。

連作短編集だが、そこに明確な繋がりはない。何かを目的とした物語ではなく、短編ごとに世界が変わり常識も変わる。同じ名前のキャラクターがでてきたとしても、そこには何の繋がりもない。あえてそうしているのだろうが、読者が混乱するのは間違いない。

砂で何十年もかけて曼荼羅を作る。地震でゆがめば、また何十年もかけて修正する。そこに意味を求めるべきではない。移動する湖や、人の思考回路に入り込む仕組みなど、ひとつの短編に広げれば長編作品ができるのではないかと思えるほど面白い題材もある。

とりわけ、この世に存在する人間は、すべて何か巨大な力に操られているということを強調している。それは神のような存在であり、そう考えること自体が、神に制御されている世界のようだ。あまりに壮大すぎるが、考え方を変えると映画の「マトリックス」のようなイメージなのかもしれない。

本作で象徴的な存在として描かれている赤目姫。それはまるでS&Mシリーズの某天才をほうふつとさせるような描かれ方だ。一般人はただ赤目姫に心酔するしかない。何か事件が起こるだとかいうのではなく、抽象的な物事をひたすらツラツラと説明される場面もある。

一度読んだだけですべてを理解するのは難しいだろう。過去の作者の作品と比べても、ここまで難解な作品はない。コアな森作品ファンならば、このわかりにくさも良いと思うのかもしれない。自分はまだその境地には達していない。

読む人を選ぶ非常にマニアックな作品だ。



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