GOSICK8 下  


 2012.9.14    もしかして続きが?というエピローグ 【GOSICK8 下】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

上巻の陰鬱な雰囲気をそのまま引つぎ、暗黒の時代に生きる二人を描く。戦争が始まり、ヴィクトリカと久城がそれぞれ別々の戦いを繰り広げる。上巻ではヴィクトリカの存在理由が明らかとなり、そこから戦争に飲み込まれていく世界を、ヴィクトリカが救うのかと思った。そうでなくても、何かしら劇的な能力なり出来事が起こるものと思っていたが、そうはならなかった。ただの人間である久城に特別な何かができるとは思えないが、物語の終わりとして、かすかな期待はあった。暗黒の時代にふさわしく、主要な登場人物たちが次々と帰らぬ人となる。このあたり、いかにもラストへ向けた雰囲気づくりというのが、わかってしまうのが残念だ。

■ストーリー

監獄“黒い太陽”に幽閉されていたヴィクトリカは、母コルデリアの身代わり計画により脱出。ロスコーとともにソヴュールを離れて海の彼方へ。徴兵された一弥は、彼女を想いつつ戦場の日々をひたすらに生き延びてゆくが、ある日の敵襲で…。アブリルに、セシルに、グレヴィールに、古き世界に大いなる喪失と変化が訪れる。その先に待つものは?そしてヴィクトリカと一弥に再会の日は…!?

■感想
”黒い太陽”から脱出したヴィクトリカ。特別な力をもつコルデリアや、ロスコーなどが、何か大きな力を使い、戦争を止めるのかと思った。もしくわ、ヴィクトリカの力により世界に平和がおとずれるのかと思った。ある意味、漫画的だが、戦闘で死にそうになる久城を、ヴィクトリカの特別な力で助け出す、なんてオチも想像してしまった。本作は、そんなヴィクトリカが全知全能の神になるような結末ではない。今までのストーリーどおり、頭脳は明晰だが、特殊な肉体的力があるわけではない。今までの流れを崩さない結末だ。

久城がたくましく成長するのが、本シリーズの一番のポイントだろう。ヴィクトリカといると、上巻にもあるような、劇アマなラブコメ風になってしまうが、ひとりで戦地におもむくと、とたんにその隠された力を発揮する。シリアス路線の久城というのは、上巻ですでにおなじみの部分ではあるが、より渋さが増している。戦場で仲間を思いやり、敵に対しても慈悲の心を忘れない。今までの久城のイメージとは90度くらい印象が変わる描かれ方だ。

シリーズとして広げた大風呂敷は、いつの間にかたたまれていたという感じだ。精神世界の話で終わるなんていう、もっとも危惧したオチにはならなかったが、特別な山場もなく終わったという感じだ。これですべての謎が解けたのか?という疑問は残る。ただ、脱出して終わりというだけでは芸がなく、必ずこの後何かあると思ったが、何もなかった。離れ離れになった二人が、どのようにして再会するかという大きな問題も、なし崩し的に解決している。強引さは感じないが、やけにあっさりとした終わり方に思えてしまう。

エピローグを読むと、もしかしてまだ続くのか?なんて思ってしまう。




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