GOSICK7  


 2012.5.7   過去の事件を引っぱりだす 【GOSICK7】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

GOSICK4で登場した錬金術師がらみの物語。王妃ココ=ローズの首なし死体の謎に挑むヴィクトリカ。今回はヴィクトリカの父、ブロワ侯爵によりヴィクトリカが謎解きに挑戦する。いつものごとく、久城がヴィクトリカの後を追う形で事件に関わるのだが、今回はミステリー色が強い。ほぼ同時に離れた場所で存在したココ=ローズ。あたかも人間が瞬間移動したかのように思わせる流れだ。物語は、ココ=ローズとそっくりな人物の存在と、不可解な死の報告などで、謎は深まるばかりだ。過去の流れから、ある程度物語の流れは想像できる。しかし、最後の最後にしっかりとしたオチがある。誰がなんのためにという不可解さと、科学アカデミーとオカルト省との駆け引きなど、読むべき部分は盛りだくさんだ。

■ストーリー

クリスマス直前の気分に華やぐ聖マルグリット学園。だが、外の世界では「2度目の嵐」が迫りつつあった。父ブロワ侯爵によって首都ソヴレムに召喚されたヴィクトリカ、心配で後を追う一弥。ソヴュール王国最大のスキャンダルにして謎、王妃ココ=ローズの首なし死体事件に挑むふたりに侯爵の謀略が…。豪華劇場に過去と現在が交錯し、大いなる罪が暴かれたとき、世界はその様相を変える。

■感想
ヴィクトリカの出自という大きな問題はある程度明確になっている。今回は、冒頭からコルデリアが登場し、ヴィクトリカと瓜二つということから、その関係がはっきりしてくる。そして、父親であるブロワ侯爵の策略で、なかば強引に過去の謎解きに挑戦するヴィクトリカ。オカルト省と科学アカデミーの対立というのが根本にはあるのだろうが、そこにさらに、灰色狼の末裔であるヴィクトリカが絡むと、否が応でも複雑になっていく。今回は、久城はどちらかといえば、オマケ的存在となり、メインは過去の謎解きとなっている。

GOSICKシリーズの中では一番印象深いGOSICK4での錬金術師リヴァイアサンの物語だが、本作はそれと深い関わりがある。リヴァイアサンに心酔した王妃ココ=ローズの突然の死というのは、大きな事件だったのだろう。その事件の不可解さもさることながら、何十年もたったその後、ヴィクトリカをはじめ、様々な者たちがあえて再調査を行う理由がしっかりと語られている。過去の事件に隠された大きなスキャンダル。科学アカデミーとオカルト省との対立が、事件解決をより加速させてはいるが、巻き込まれる形の久城とヴィクトリカには苦難の道でしかない。

このシリーズもある程度流れがみえてきた。特殊な力をもつヴィクトリカと、それを利用しようとするブロワ侯爵たち。初期のほのぼのとしたユーモアあふれる展開はなりを潜め、全体的にシリアスで、ドラマチックな展開となっている。ただ、そうはいっても、お笑いの要素はある。それは本作でいえば、セシルであり、他の作品ではアブリルということになるのだろう。シリーズとしての終わりが近いのか、灰色狼の根本的な謎に迫るような記述もあり、これから先、目が離せない展開になりそうだ。

過去の印象深い事件を引っぱりだせるのは、シリーズの強みだ。




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