5年3組リョウタ組 石田衣良


2011.5.31  こんなクラスはないだろう 【5年3組リョウタ組】

                     
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■ヒトコト感想

この手の教師と生徒と学校の問題系の話は、どうしても重松清を思いうかべてしまう。重松清が、心に響くリアリティのある物語を描くので、それと本作を比較してしまう。やはり向き不向きというのはあるのだろう。悪くはないが、主役のリョウタのキャラが薄っぺらいだとか、他の教師にリアリティがないとか、きれいごとのように思えてしまう。リョウタが直面する問題というのは、教育現場が直面している真実の問題なのだろうが、それを解決する手段や、先生たちの行動には共感できなかった。まずなにより、作品全体にあるクラス同士の成績争いなど、本当にあるのだろうか?このあたりも、小説作品として都合の良いこじつけのように思えてしまう。

■ストーリー

希望の丘小学校5年3組、通称リョウタ組。担任の中道良太は、茶髪にネックレスと外見こそいまどきだけれど、涙もろくてまっすぐで、丸ごと人にぶつかっていくことを厭わない25歳。いじめ、DV、パワハラに少年犯罪…教室の内外で起こるのっぴきならない問題にも、子どもと同じ目線で真正面から向き合おうと真摯にもがく若き青年教師の姿を通して、教育現場の“今”を切り取った、かつてなくみずみずしい青春小説。

■感想
新米教師が生徒や学校の問題に立ち向かう。ひと昔前でいうところの金八先生的なものなのだろうか。現代っ子の生徒たちに翻弄されつつも、無難に問題を解決するリョウタなのだが、そのキャラクターがどうも突き抜けていないような気がした。GTO的に生徒と悩みを共有する破天荒な先生ではなく、マジメというわけでもない。中途半端にチャラいことが、すべてに薄っぺら感を漂わせている。リョウタの周りの先生たちにしても、特に染谷という優秀な教師の存在が、この作品すべてをきれいごとの大きな膜で包んでいるような気がした。

子供たちが直面する問題は、深刻そのものだ。リョウタが四苦八苦する心境もよくわかる。しかし、結局のところ、感動するような解決策や、提案があるわけではない。重松清的に、抗いようのない現実を突きつけるというのでもない。とりあえず表面上の問題は解決しました。だけど、その裏に隠されている真の問題については、考えないことにする。というようなスタンスが感じられた。やはり作家にも向き不向きがあるのだろう。恋愛小説や、若者の現実を描いた小説はすばらしいが、教育現場に対してのアレコレを描かれると、どうもとってつけたように思えてしまう。

いまどきの小学生がどう考えているのかわからないが、熱血教師というのは受け入れられるのだろうか。作中では、教師の思いに感化され、生徒たちが自発的に行動する場面が多々ある。まぁ、都会の小学生というわけではなく、微妙な都市ということで、子供たちもスレていないのだろう。現役の教師が本作を読むと、もしかしたら、こんな生徒や同僚に憧れるのかもしれない。それほど、ある意味で理想的であり綺麗におさまっている。それにしても、クラス同士で成績を争い、それが教師の評価に繋がるなんてことは、当たり前にあることなのか??

本作を読んで、小学生がどう思うか聞いてみたい。



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