1Q84 BOOK3 村上春樹


2011.7.20  不思議な世界の終りはシンプル 【1Q84 BOOK3】

                     
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■ヒトコト感想

BOOK2から引き続きの世界観。牛河の世界がくわわったことで、現実感のある世界になるはずが、牛河までも最終的には精神世界の話にとりこまれている。いちおう、本作である程度の結論はでている。はっきりとしないものは、そのまま放置されているが、終わりはある。青豆と天吾がどうなるかというのは、ある程度予想どおりだ。本作では主に、青豆のひっそりと隠れる生活と、天吾の父親を見守る生活。そして、牛河の青豆を探す生活というのがメインになっている。それぞれの淡々と流れる日常を描きつつ、結末へと近づいていく。大きな山場は特になく、怪しげな宗教団体についても、そこまで詳しくは語られない。ただ、物語の結論がでているというのは、予想外だ。

■ストーリー

そこは世界にただひとつの完結した場所だった。どこまでも孤立しながら、孤独に染まることのない場所だった。

■感想
精神世界の物語になるのは予想がついた。青豆と天吾がどうなるかもわりと予想通りだ。ミステリアスな流れはあるが、謎をメインとする物語ではないので、そこに整合性や、しっかりとした結論を求めてはいけない。リトルピープルや空気サナギがいったい何なのかや、謎の宗教団体は今後どうなっていくのかなど、消化不良の部分を真剣に考えてはいけない。逃亡中の青豆の生活と、父親を見守る天吾の生活は、落ち着きながら安定している。作者の作品に登場するキャラクターは、わりと健康的な生活を過ごしているので、いつものパターンであることは間違いない。

天吾と青豆の人との関わりが極端に少なく、一人で孤独に生活するという印象は前作から変わらない。物語の根本には人嫌いの要素があるように思えてならない。NHKの集金人が何度もやってくるくだりなど、結局なんだったのかわからないが、それらも、何かを比喩しているのだろう。謎を突き詰めて考えるのではなく、その場の雰囲気で不思議さを楽しむ。後に明確な答えが示されると考えて読むと、納得いかないだろう。長大な物語ではあるが、簡単な文章なのでスラスラ読めるのは、いつもどおり作者の作品らしい。

今後、book4がでてくるのだろうか。物語として完結しているので、その後続けるとしたら、主役は変わるのだろう。1Q84という世界の物語として、青豆と天吾がどうなるかというのも結論がでた。月が二つある世界という、現実とは少しずれた世界の雰囲気はすばらしい。現実離れした登場人物たちであり、その言葉や思考原理についても、普通ではない。それでも、非現実的な世界の中では、青豆や天吾の生活を読むことに心地良さすら感じてしまう。強烈なインパクトがあるわけではないが、気分はよくなる。

ミステリー的な謎をメインととらえると、納得いかないかもしれない。



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