夢にも思わない 宮部みゆき


2009.6.25  中学生らしくない 【夢にも思わない】

                     
■ヒトコト感想
今夜は眠れないの続編のような作品。いつもの中学生コンビが大活躍する。しかし、内容はというと…。前作よりもさらに中学生ばなれしている。事件もそうだが、二人のとる行動がまったく中学生っぽくない。それでいて、中途半端に中学生らしさをだそうとする。事件が発生し、それに関わる中学生コンビのスタンスがどうにも曖昧で、へんに恋愛を意識したり、へんなところで友情やら世間体やらを気にしてしまう。どうもちぐはぐに感じた。特に主人公とクドウさんと島崎との関係が、ちょっとした三角関係なのかと思いきやそうではない。一つの出来事をきっかけとして、その人の性格がどうだとか考えてしまう。説得力に乏しく、事件に対して現実性がなく、事件解決のプロセスもなんだか都合良すぎるように感じてしまった。

■ストーリー

秋の夜、下町の庭園での虫聞きの会で殺人事件が。殺されたのは、僕の同級生のクドウさんの従姉だった。被害者には少女売春組織とのかかわりがあったらしい。無責任な噂があとを絶たず、クドウさんも沈みがち。大好きな彼女のために、僕は親友の島崎と真相究明に乗り出した…。

■感想
あこがれのクドウさんとお近づきになれるかもしれない。そんな主人公の考えはある事件によってもろくも崩れ去った。事件がきっかけとして、よりクドウさんと親密になれたのは確かだろう。中学生が考える恋愛というのが、作者のイメージでは随分と清く正しいもののように思えてならなった。何をもって付き合っているというのかも、はっきりとしなかった。クドウさんというのが、本作ではとても魅力的な女性のように描かれている。物語の本質として、それは重要なのだろうが、どうも、それ以外の部分にばかり気になってしまった。

主人公と島崎の関係がいまいちしっくりこなかった。作中、二人がギクシャクするというくだりがあるが、その理由もはっきりしない。理由らしきものは語られてはいるが、それが全て納得できるものではない。島崎が刑事顔負けに推理をはたらかせ、誰にも言わずに、事件の真相にたどりついているのも納得がいかない。そればかりか、事件の幕引きを自分たちだけでおこなおうとするあたりも、かなり荒唐無稽すぎる。それに協力する人々もなんだか、現実離れしすぎている。前作の中学生らしさというのが、本作では皆無だ。特に島崎は大人でもやらないようなことをやり遂げてしまう。無理矢理すぎると感じた。

事件の性質が、関係なくとも名前がでるだけで嫌な思いをする事件なだけに、クドウさんは悩んだのだろう。本作を読んでいると、主人公を含め、島崎やクドウさんはとても中学生のように思えなかった。ある意味大人びているのだが、考え方がなんでも自分たちでやってしまおうとしすぎるように感じた。恋愛に関しては中学生っぽさをアピールしているが、それ以外の部分ではまったく中学生ではない。周りの大人たちの放置っぷりにも、違和感を感じた。ページ下部に登場するちょっとしたパラパラ漫画のイメージで読むと、内容との落差から、唖然としてしまうことだろう。

前作と比べると、面白さは半減している。



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