2010.7.26 オウムしか居場所がない人々 【約束された場所で】
■ヒトコト感想
アンダーグラウンドでは被害者の生々しい事件当時のインタビューが語られていた。本作ではそれと対極をなす、オウム側に属する人々のインタビューが語られている。といっても、事件には無関係の人ばかりなので、事件についての詳細な言葉はない。ただ、どういった経緯でオウムに入信したのか、そしてどのようなことをやっていたのかが語られている。非常に興味深い部分が多々あり、なんとなくだが言っていることもわからなくもない。不幸にも現実世界に居場所がない人にとって、オウムという場所は居心地の良い場所だったのだろう。どんな犯罪が犯されているか知らないまま、いつの間にか犯罪者扱いされたというのが正しいのかもしれない。被害者とはまた違った目線で事件について考えることができるだろう。
■ストーリー
癒しを求めた彼らはなぜ無差別殺人に行着いたのか?オウム信者へのインタビューと河合隼雄氏との対話によって現代の闇に迫る
■感想
アンダーグラウンドで感じた、リアルな事件描写と緊迫感。電車に乗っていると、いつ何が起きるかわからない変な警戒感が湧いてしまった。それに比べると本作は純粋に元オウム信者の心情が語られているので、それほど身につまされる感じはない。宗教にのめり込む気持ちはよくわからないが、そのことについてどうこう言うつもりはない。ただ率直に感じたのは、現実世界で満たされていない人が、宗教へと向かっていくのだろうということだ。当然かもしれないが、現実が楽しくて仕方がない人が、すべてを捨てて出家などしないだろう。
本作に登場する元信者は、ほぼすべての人がオウムから何かしら力を貰うことができたと語っている。最終的にはとんでもないことになってしまったが、あれだけ信者を増やすことができたのだから、教祖にはそれなりの力があったのだろう。悩み苦しむ人を助ける、もしくわ偶然助けた何かがあるのだろう。現実世界になじめず苦しんでいる人にとっては、まさにオウムは救世主だったことだろう。それが突然、解散して現世に戻れというのもかわいそうな気がするが、それはしょうがないことだ。報道などで目にする信者のイメージと本作の中で語られる信者のイメージはまったくリンクしないが、どこか現実世界になじめない人々という意味ではリンクするような気がした。
元信者たちのインタビューを読んで、自分は絶対に宗教にのめり込むことはないなぁと思った。現実に不満はあるにしても、それを宗教に頼ってどうにかするという感覚にはならない。この世は何をやっても自分でどうにかするしかないからだ。ある意味同じような人たちに囲まれ、上から指示されたことをやっていれば、功徳がつめ、確実な成果がでる。これほど楽なことはないだろう。現実では確実な成果が出るかでないかわからなくても、やらなければならないことは多い。安易な逃げと考えるわけではないが、楽な方へ傾いているように感じて仕方がなかった。被害者のインタビューとはまた違った意味で興味深い作品だ。
忘れかけた事件を思い出し、自分はどうなっても宗教へは走らないだろうなぁと確信してしまった。
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