若い読者のための短編小説案内 村上春樹


2008.10.26  まるで国語の授業を受けているようだ 【若い読者のための短編小説案内】

                     
■ヒトコト感想
村上春樹が昔の有名短編作品を批評し、それを読み、自分が批評する。なんだかおかしな感じだが、読んでいて違和感を感じまくった。なんだこれは?まるで国語の教科書を読んでいるような気分になってきた。そもそも、作者が本を読み込むスタイルというのが一般とは、かけ離れている。何度も暗記するほど読み込み、メモを取る。そのスタイルがあってこそ生み出される批評なのかもしれない。はっきり言えば、サラリと読み、直感的に感想を書く自分のスタイルとは対極をなしている。そうなってくると当然、出てくる感想も違う。小難しく、難解で、何もそこまで深く考えなくても良いのではないかと思うほど、細部まで考えている。まるで授業を受けているようだ

■ストーリー

吉行淳之介、安岡章太郎、丸谷才一──、日本の六人の代表的な作家の小説を、村上春樹が縦横無尽に読み解く。目を洗われる文学論

■感想
本を読んで感想を書く。今まで結構な量の感想を書いてきたが、苦痛に思ったことはない。作品を読み終わると、感じたことをそのまま、誰に気兼ねすることなくサラリと書けばよかったので、まったくストレスなく書くことができた。本作のように、一つの作品をしっかりと読み込み、作者がここでは何を言いたかったのか、そして、どのような心情でこの文章を書いていたのか、なんてことを真剣に考えたことはない。瞬間的に思いつけば別だが、深くさぐりを入れることはしないし、できない。本作のようなスタイルを貫くのは相当の読書好きか、根気強い人でなければできないだろう。

本作のような批評を真っ向から批判するわけではない。いくら国語の教科書的であっても、それを求める人がいる限りは問題ないだろう。過去のすばらしい短編を紹介すると言う意味でも良いことなのかもしれない。ただ、自分の場合は、この作品を読んだからといって、紹介されている短編を読んでみたいとは思わなかった。なんだか、難しい文学作品に挑まなければならないのではないかと変に気構えてしまう。楽しんで読むことがなく、勉強の一つになってしまうかもしれない。

もともと作者が学校の授業として行っていたことをそのまま書いているので、授業的になるのはしょうがないのだろう。文学作品を真剣に読み込んだことのない自分にとっては、そんなことまで考えるのかと驚いてしまった。作者はこのような意図でこの文章を書いている。なんてことを今更議論するよりも、自分はこう思う、あなたはどう思うという、それぞれの感想を言う程度でよいのではないかと思った。その際に、別に何度も暗記するほど読み込む必要はなく、自分のペースで好きな読み方をすればよいのではないかとも思った。

すべてを批判するわけではないが、この教科書的流れと小難しさにはちょっと驚いた。



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