父親たちの星条旗


 2009.9.2  戦争は何も生み出さない 【父親たちの星条旗】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
硫黄島からの手紙をすでに見ているだけに、本作はまた違った感覚で見ることができた。もしかしたら、日本人は硫黄島を先に見た方が良いのかもしれない。アメリカ側から見ると、硫黄島に潜む日本兵たちは、まさに悪魔以外のなにものでもないのだろう。仲間が次々とやられていき、戦争の悲惨さが存分に表現されている。しかし、この見方が一面的で、もう一方からすると、もっと辛い潜伏生活があるということがわかっているのといないのとでは、随分と受ける印象も違ってくる。戦争でヒーローに祭り上げられた兵士たち。悲惨な現実を知らず、勝手に客寄せパンダにされるのはどんな気持ちなのだろうか。誰も戦争を喜んでいない。それは敵対する日本兵であっても、圧倒的力を示したアメリカ兵であっても同じことだ。

■ストーリー

硫黄島の擂鉢山に星条旗を掲げる6名の兵士を写した写真。アメリカ国民に英雄と称えたられた兵士たちの思いとは…。写真の裏側に秘められた真実が今、明かされる。 アメリカ側の方面から戦争というものを捉え、一貫し、戦争の虚しさを伝えている。

■感想
硫黄島を先に見ていると、アメリカの圧倒的な物量の前になすすべがないように思えた。しかし、アメリカ側からすると、硫黄島の地下に潜む得たいの知れない日本兵の脅威は相当なものなのだろう。どちら側からしても、相手に対しての恐怖心はある。そして、どちら側も戦争に対して、決して良い思いは抱いていない。そんな中で、ヒーローとして祭り上げられた兵士たち。死んでいった仲間のことを思うと、ただのマスコット的役割をになっていることに、内心イラついているのだろう。戦争に対しての強烈な嫌味というか、嫌悪感をありありと感じさせる作品だ。

二部作の二部目を先に見たのだが、そのほうが良かったと思った。戦勝国であるアメリカも、実は戦いに対してギリギリの状況だったということ。本土が無傷なために、逆に戦地と本国の温度差のすごさ。そして、勝手にヒーローとされた兵士たちの無念さ。戦争は誰の得にもならない。そして、むなしさだけしか生み出さない。勝利国の良い部分だけを見せることをせず、暗部をしっかりと描いている本作。二部目である硫黄島からの手紙とまた違ったトーンで戦争の無意味さを訴えている。

戦地で星条旗を掲げるという象徴的行為。偶然にも二回目の掲げる儀式を写真に撮られたために、ヒーローとされる。この行為がヒーロー化されるのも、アメリカらしいと思った。かなりの戦死者をだした戦いであっても、本国の人々は勝利に浮かれるだけ。どの国も、犠牲になった人々よりも、国を挙げて一つの目的を達成するためのプロパガンダを重視する。敗戦国の兵士たちがボロボロなのはわかるとしても、勝利国の兵士たちもボロボロな思いをする。まさに、戦争は何の意味もないということを現している。

戦争に対する強烈な抗議のメッセージを感じた。



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