地球の静止する日


 2008.12.26  クラトゥの表情は秀逸 【地球の静止する日】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
リメイク版を先に見て、どうしてもオリジナルを見たくなった。約50年以上前の作品というのはやはり違和感がある。白黒の映像というのは味があるのだが、寂しさもある。ストーリー的にはリメイク版よりもしっかりしており、分かりやすいし納得できる。ただ、時代的な背景を如実にあらわしているのだろうが、冷戦時代の話をもってこられても実感がない。無敵のロボットであるゴートがそれほど巨大ではないとか、全体的に安っぽいとか、つっこみどころは沢山ある。映像的にはどうしてもリメイク版には負けるのだが、クラトゥの表情だけはオリジナルが勝っていた。なんともいえない哀愁ただよう表情は、地球の未来を悲しんでいるようで、とても趣深かった。

■ストーリー

宇宙からの来訪者クラトゥは、全銀河系の要請として地球上の暴力的闘争の即時的中止を勧告するために銀色のロボット、ゴートをひきつれてワシントンに飛来、合衆国大統領との会見を申し込むがあえなく拒絶される。彼は暴力には否定的だが、強力な力を持っている事を示すため、30分間だけ地球の機能を静止させた。地球の静止する日である。しかし、クラトゥを危険視した地球人は軍隊を派遣して射殺してしまう。物言わぬ巨大ロボット、ゴートが怒って暴れ出し、クラトゥの死体を持ち去るが……。

■感想
白黒の映像と、なんだか笑いがでてくるほどの特殊セット。謎の巨大ロボットであるはずのゴートが全然巨大でなかったり、宇宙船が安っぽかったり、今見るとずいぶん笑いを誘う場面ではある。しかし、ストーリーは大真面目だ。冷戦時代と核の恐怖を警告するように、宇宙からの来襲者に世界中が驚くさまはリメイク同様見ていて面白い。クラトゥが地球にやってきた理由が本作とリメイクで異なるのは当然のことだろう。時代的に旬な問題をテーマとすることが正しいのは確かだ。ただ、本作のクラトゥが危機感をもっているのが、他の惑星に核戦争を引き起こしかねないと言う部分だけは納得できなかった。それでは地球人同士でドンパチやるのは何も問題が無いように聞こえてしまった。

全体のテーマとしてはリメイク版の方が世界的な危機感を煽るにふさわしいかもしれない。しかし、世界中の首脳たちが集まらず、クラトゥを困惑させる理由は本作のほうが優れている。リメイクのクラトゥは、無表情で感情がないように感じられたが、本作のクラトゥの表情はすばらしかった。飄々としているようで、悲しみを漂わせる表情。地球人たちのまとまりの無さを嘆きながら、奇妙な地球人たちを観察する。地球の未来を想像して悲しんでいるかのようなその表情と、自分の危険を察知してゴードを停止させる暗号を伝えるなど、オリジナル版ならではのよい部分だ。

ストーリーとクラトゥの雰囲気は断然オリジナルだろう。不自然さもなく、最後も納得できる。映像的には当然リメイク版なのだが、オリジナルは別の楽しみ方がある。50年以上前のアメリカをリアルに感じることができ、さらには面白SFを感じることができる。ステレオタイプのUFOの内部と、歩くと皺がよるゴートの膝裏。なんだか、ゴートの動きが妙にほほえましく感じてしまう。それは子供のころにNHKの教育番組で登場する着ぐるみを見ている気分に近いかもしれない。

映像の話は抜きにしても、新鮮さから面白く感じてしまうから不思議だ。



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