2008.10.5 妖怪は一般常識? 【対談集 妖怪大談義】
■ヒトコト感想
妖怪の世界がこれほど奥深く壮大なものだとは思わなかった。さらに言うなら、民俗学というくくりがあるにしても、妖怪を研究している学者がこれほどいるとは思わなかった。一般的にはマニアックな部類に入る妖怪であっても、さも当たり前のように語る京極夏彦と対談者たち。ここだけ別世界のように、妖怪は一般常識となっている。マニアックな妖怪ファンか、もしくはコアな京極ファンでなければついていくのは辛いかもしれない。しかし、読んでいるとまったく別世界でありながらも、それなりに知的好奇心を満足させられてしまう。柳田國男がどんな人物で、民俗学とはどういうものか。妖怪研究というのはどんなものなのか。古いはずなのに新しい。まるで最近突如としてその存在が明らかになったかのごとく妖怪がクローズアップされている。
■ストーリー
学者、小説家、漫画家などなどと妖しいことにまつわる様々を、いろんな視点で語り合う。間口は広く、敷居は低く、奥が深い、怪異と妖怪の世界に対するあふれんばかりの思いが込められた、充実の一冊!
■感想
京極夏彦が、妖怪と関係の深い人物たちと交わした対談集。まず妖怪が学問としてある程度認められており(民俗学というくくりだが)学会なども開かれているということに、非常に驚いた。素人考えであれば妖怪なんてしょせん子供だましで、偉い学者さんたちが相手にするはずがないと…。しかし、実際には時代やその土地土地から妖怪が生まれた背景をさぐりだし、民俗学の一部として立派な学問に昇華している。世間的にマニアックな部分かと思っていたが、実は研究がずいぶんと進んでいるということにも驚かされたし、研究している人がいることに一番驚いた。
偉い学者さん以外にも妖怪好きや関係する人々との対談が収録されている。心底妖怪が好きなんだなぁと思わせる描写が多数あり、三度の飯より妖怪が好きなようだ。ただ、ブームがくるまではそれをおおっぴらにできず、京極夏彦が作り出したブームに便乗するように、妖怪が見直されてきた。ここ最近では鬼太郎が映画になったりとさらにパワーアップしている印象を受けるのだが、それが一過性のものなのかどうか…。京極夏彦の小説が売れなくなったら、ブームは下火になるのか。もともとなぜこれほど流行ったのかもよくわからない難しい小説だが、本作を読んで、本当に好きな人が情熱をこめたその熱のようなものが伝わっているのかもしれないと思い始めた。
コアな妖怪話と共に、印象に残っているのは、難しい学者さんたちの話の間に突如として登場する漫画家との対談だ。昔の子供向け妖怪本を面白おかしく解説している。何冊か見たことがある物もあり、非常に興味深い部分でもある。妖怪の絵が最初に書いた人のものを脈々と受け継いでいるだけであったり、水木しげるのような影響の強い漫画家の書いた絵が、そのまま元祖になったりとかなりいい加減な部分があるにはあるのだが、それも妖怪らしくて良い。
マニアックなまでに妖怪好きか、京極夏彦の熱烈なファンならばかならず熱中できるだろう。それ以外の人にとっては…。
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