終戦のローレライ2 福井晴敏


2008.10.10  ローレライシステムに納得? 【終戦のローレライ2】

                     
■ヒトコト感想
ローレライシステムの根幹が明らかとなる本作。映画を見ているだけに種明かしされても、それほど衝撃は受けない。しかし、よりアニメチックでファンタジーな雰囲気を強く感じた映画版に比べ、本作ではフリッツとパウラの二人の生い立ちから、現在に至るまでの苦悩を詳細に描くことで、ローレライシステムが、さも自然なことのように感じられた。パウラの特殊能力についても、違和感なく受け入れられ、それを応用したローレライシステムになんだか今更ながらワクワクしてしまった。本作の大半をこの兄弟に費やしたが、ラストでは潜水艦同士の激しい戦闘がまっている。頭の中には満身創痍でボロボロになった伊507の映像がローレライのようにはっきりと思い浮かんできた。

■ストーリー

この国に「あるべき終戦の形」をもたらすと言われる特殊兵器・ローレライを求めて出航した伊507。回収任務に抜擢された少年兵・折笠征人は、太平洋の魔女と恐れられたローレライの実像を知る。米軍潜水艦との息詰る死闘のさなか、深海に響き渡る魔女の歌声がもたらすのは生か死か。

■感想
偶然に発見された新技術で、画期的なシステムとして華々しく登場するローレライシステム。技術の粋を集めた集大成。映画を見ていない人は、そんな想像をしたかもしれない。しかし、蓋を開けてみれば、ローレライシステムのカラクリはなんとも都合の良すぎるものだった…。ここでがっかりするか、そのままのめり込むか、大きく別れるところだろう。映画を見ていれば当然許容範囲であり、予想外にしっかりとした理由付けがされているので、違和感はなかった。ただ、パウラの特殊能力を一般人が目に見えるように砂鉄で映像化したというのは、ちょっと飛躍しすぎではないだろうか。それだけでも相当の技術が必要な気がしてならなかった。

ボロボロで満身創痍な伊507。その破壊された描写だけ読むと、とても水圧の壁を突破できるとは思えないのだが、しぶとく生き残る。本作のラストではローレライシステムをしつこく追い求めてきた「しつこいアメリカ人」との戦いがある。巧みな制約条件で無敵と思われたローレライシステムを足かせとして、物語をスリリングな方向へと導いている。二杯の潜水艦相手に一撃で倒すという離れ業をやってのけるあたり、かなり強引で、漫画的だと感じたが、それも戦闘のテンションの高さにごまかされてしまった。

歴史的事実を絡めながら進む本作。終戦間際の出来事であり、なんだか、映画にはない、”終戦”というタイトルがついた由来が明らかになりそうな雰囲気がある。ローレライという魔法の杖を手に入れた伊507であっても、いつ航行不能になるかわからない状態で先の見えない戦いへと突き進む。多少の犠牲を払いながらも、進んでいく物語。なんだか激しいテンションの上げ下げに疲れてしまった。フリッツとパウラという二人の兄弟の行く末は明るくない。それがわかっているだけに、戦闘を終えたつかの間の休息でさえも、悲壮感が漂っている。

残り3、4と続く本シリーズ。映画との違いはこれからはっきりと表れてくるのだろうか。

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