スカイ・イクリプス 森博嗣


2009.1.17  シリーズを読んでいてもツライ外伝 【スカイ・イクリプス】

                     
■ヒトコト感想
スカイ・クロラシリーズの番外編。まずシリーズをしっかりと読み込んでおかなければ話にならない。読み込んでいたとしても、本編の余韻が覚めないうちに読まないとつらいだろう。シリーズ独特の鋭利な刃物のような空気感はすばらしいと思うが、そのために余計な説明が省かれている。結局、本編のキャラクターをしっかりと頭に思い浮かべることができなければ、まったく楽しめない。というよりも、意味がわからない可能性がある。ただでさえ印象の薄い脇役を主役に抜擢し短編を描く。定番なのかもしれないが、あまりに説明不足で雰囲気を楽しむしかない。内容を楽しむにはかなり本編を熟知しておく必要がある。

■ストーリー

「戦闘法人」が戦争を代行する架空世界の戦闘機乗りたちが織りなすドラマを描くシリーズ番外篇。本編では脇役だった人物が主人公となる短編集。

■感想
スカイ・クロラシリーズを全て読み終わった直後に読むべき作品なのだろう。それ以外ではまったく頭の中に内容が入ってこない。まず登場人物たちの説明が一切無い。そして、すべてを理解していることを前提に話が進められるため、意味がわからない人にはまったく理解不能だろう。自分の場合もかろうじて憶えていた名前を頼りに、物語を理解しようとした。ただ、短編の一つ一つが明確な主題があるように感じられず、いつもの雰囲気重視の作品となっている。この冷たい無機質な空気感というのはすばらしいとは思うが、あまりに説明不足だ。

シリーズの売りの一つでもある戦闘機での戦い。本作ではそれらはほとんど登場しない。空を飛ぶということがどれだけすばらしく、大空に羽ばたきたいという気持ちにはなってくるが、それだけだ。ギルドレという特殊なパイロットたちが周りとどのような人間関係を築いているのか。そして、その周りの人々はどのように彼らを見ているのか。短編ごとに変わる主人公たちに感情移入することは難しい。まずそれだけの情報を得ることができない。なんだか、ちょっとした風景画を見ているような気分だった。

文字をツラツラと追い求めている間は、独特な文体と登場人物たちの言葉。それらのリズムが心地よく感じる場合もあるが、内容は頭に入ってこない。気づいたら一つの短編が終わっていたなんてこともある。これだけサラリと読めてしまうということは、内容が薄いのと文字が少ないせいだろう。外伝的なものであれば、本編をしっかりと読み込んでおくことは重要なのかもしれない。しかし、今まで他のシリーズではそれなりに楽しむことができたのに、今回はまったくできなかった。

シリーズを読んでいたとしても、楽しめるかどうかは微妙だ。



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