サイマー! 浅田次郎


2010.4.3  博打嫌いは読むべからず 【サイマー!】

                     
■ヒトコト感想
作者が競馬好きというのはわかっていた。さらには博打好きということも、エッセイを読むと容易に想像できた。本作は競馬雑誌に連載されていたようで、当然競馬の話が大多数を占める。もちろんそれだけでなくカジノの話もでてくる。結局は博打の話に終始している。そのため、博打嫌いの人には読んでもまったく面白くないだろう。ローカル競馬場の話や海外の競馬場の話など、競馬好きでなくともそれなりに楽しめる。それが博打嫌いとなると、もしかしたら途中で投げ出してしまうかもしれない。本作の特徴として、長期連載を一つにまとめたようで、作中に大きく時代の流れを感じてしまう。作者がまだ直木賞を受賞する前から、超売れっ子作家になるまで、全ての時代が描かれているので、ファンにはたまらないだろう。

■ストーリー

「サイマー」とは「賽馬」=中国語で競馬のこと。馬券を買い続けて三十年の作家が、府中、中山はもちろんのこと、英、米、仏、香港、ドバイ、そして時にはラスベガスのカジノにも寄り道…などなど世界各地の競馬場を転戦しつつ、熱い思いを綴った競馬紀行エッセイ集。読めば、レースと人生のいろんなことに挑む勇気がわいてくる。

■感想
一年に一回競馬に行くか行かないかの自分でさえも、本作を読むと思わず競馬場に行きたくなってくる。競馬というギャンブルに魅力を感じるのではなく、競馬場という場所に興味がでてきた。府中だけでなく、中山や福島、そして海外など。まさに競馬初心者を、ローカル競馬や海外の競馬場へいざなうための作品と言っても過言ではない。もちろん、すべてを手放しでほめているわけではない。別に作者はJRAから金を貰って書いているわけではないので、すべて正直な感想なのだろう。指定席の安さやパドックの見にくさなど、ベテランならではの視点で語られている。

本作では競馬だけでなくカジノについても言及されている。海外の、特にラスベガスのカジノについては、競馬以上にべた褒めしている。その環境や食事面などのほかに、海外でありながら交通の便の良さと料金の安さ。へたすれば、競馬からカジノに鞍替えする人もいるかもしれない。博打好きでなくとも、これほどすばらしいところならば、一度くらいは行ってみたいと思ってしまう。東京にカジノができるかもと言われて久しいが、もしできたとしたら、競馬の売上げは間違いなく落ちるだろう。

長期間の連載をひとつの本にまとめているためか、時代の流れを感じる記述がある。まだ、作者が直木賞を受賞する前から始まり、超売れっ子になるまで描かれている。そのため、作者の成り上がりぶりをじっくりと読み解くようで面白い。さらには、オールド競馬ファンにはたまらないのだろうが、昔懐かしの名馬が登場してくる。もちろん、作中ではリアルタイムに馬券を買った作者の考察つきだ。はっきり言えば、競馬は有名どころの騎手と馬しか知らない。それでも、それなりに楽しめたのは、作者が真のギャンブル好きなので、好き過ぎるオーラがでているからだろうか。

博打嫌いは読まない方がいいかもしれない。



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