ロミオとロミオは永遠に 上 恩田陸


2010.8.3  とんでもない近未来の日本 【ロミオとロミオは永遠に 上】

                     
■ヒトコト感想
大東京学園という名前と、東京23区がそのままクラス名となる。80年代90年代のサブカルチャーを古き遺物ととらえ、特殊な学園SFモノがスタートする。荒廃した日本の中で唯一エリートになるチャンスを求め、過酷な入学レースに挑む少年たち。入学してからの学生生活がメインとなっているが、およそ学生とは程遠い、とんでもない生活が待っている。規則に縛られた生活と黙認されたアングラな世界。脱走しようとする「新宿」クラスの面々など、一筋縄ではいかない展開だ。主役であるアキラの兄がどうやって脱走したのか、学園の秘密は?謎はいくつか提示されているが、激しい学園SFモノであることは間違いない。近未来の日本の姿とは思えないが、大東京学園はとんでもない学校だ。

■ストーリー

日本人だけが地球に居残り、膨大な化学物質や産業廃棄物の処理に従事する近未来。エリートへの道は唯一、「大東京学園」の卒業総代になることであった。しかし、苛酷な入学試験レースをくぐりぬけたアキラとシゲルを待ち受けていたのは、前世紀サブカルチャーの歪んだ遺物と、閉ざされた未来への絶望が支配するキャンパスだった。やがて最下級の「新宿」クラスと接触したアキラは、学園の驚くべき秘密を目にするが…。

■感想
今となっては懐かしいサブカルチャーを、はるか昔の遺物として扱い懐かしむ。近未来の大東京学園で繰り広げられる学園生活が本作のメインとなっている。この大東京学園がぶっ飛んだ世界で、世紀末というか北斗の拳の世界ではないかと思えるほど、体力がものを言う世界になっている。東京23区をクラスに見立て、山手線で移動し学園生活をおくる。昔なつかしのフレーズや流行モノなど、本作を読んで懐かしいと感じるモノの違いで、世代は大きくわかれるだろう。

最下層のおちこぼれたちが集まる「新宿」クラス。そこの生徒たちがこぞって脱走しようとする理由。そして、物語の鍵となる少女やアキラの兄であり、煙のように大東京学園から消え去った男など、興味をそそられる部分は多数ある。ただ、基本は世紀末的な学園SFモノなので、受け付けない人には厳しいかもしれない。生徒全員が男ということで、アングラな世界の中で、男の友情を越えた何か禁断な雰囲気を感じる場面もある。まるで刑務所のような大東京学園で何が行われているのか、それは下巻になればはっきりすることだろう。

東京を舞台に、よく知った場所が舞台となる。荒れ果てた近未来のため、現在とはまったく違ったイメージなのだろう。ただ、80年代90年代に青春を謳歌した人にとっては、懐かしくもあり数々の思い出に浸れることだろう。作中に登場する言葉をどれだけ知っているかで、年齢が判別できそうだ。それらサブカルチャーの扱い方を楽しむべきか、それとも純粋にアキラたちの行動にワクワクドキドキしながら楽しむべきか。人それぞれだろうが、僕はどちらも微妙だったかもしれない。

下巻でどのような結末が待っているか、それで上巻の評価も変わってくるだろう。

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