レッドクリフ PART2


 2009.4.15  周瑜は最後まで爽やかだ 【レッドクリフ PARTⅡ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
PARTⅠの満足を上回るものを期待していただけに、正直ちょっと物足りない。PARTⅡからはしっかりと周瑜と孔明の激しいつばぜり合いが見られるかと思いきや…。最後までしっかりと男の友情を貫き通していた。三国志ファンからすると、この周瑜と孔明二人の関係が一番違和感を感じるだろう。複雑な人物関係を混乱することなく描き分け、キャラクター付けもしっかりしているのはとても見やすかった。曹操はとことん最後まで悪役で、周瑜たちは最後までヒーローである。この勧善懲悪は見ていて判りやすいのだが、物足りなくもある。曹操には曹操の言い分があり、周瑜にも悪な部分もある。というか、周瑜はもっと嫉妬深く、ずるがしこいというようなイメージがあっただけに、これほど最後までさわやか路線で描かれるとは思ってもみなかった。なんだかんだ言ったが、初心者にも十分楽しめる出来栄えだ。

■ストーリー

西暦208年、魏呉蜀が争う中国・三国時代。孔明(金城武)の奇策で曹操軍を撤退させた孫権・劉備連合軍だったが、食料不足と疫病のために戦意も尽きようとしていた。そこに曹操軍の2000隻の戦艦と80万の兵士が逆襲。司令官の周瑜(トニー・レオン)と孔明が作戦を仕掛けようとする中、周瑜の妻・小喬(リン・チーリン)がある行動に出る。

■感想
赤壁の戦いといえば、活躍するのは孔明ではないかと思う。そういった意味では、孔明を主役にしたほうが、よりコアな三国志ファンも楽しめたことだろう。ただ、周瑜を主役としたことで、映画としてやりやすくなっているのは確かだ。曹操に自分の妻を狙われる周瑜。妻よりも国を思い、妻を犠牲にして戦いの決意を固める周瑜。これほど判りやすいパターンはない。曹操がエロ親父顔負けの表情で小喬に迫るあたりは、悪代官に狙われる町娘のようで、誰もが想像する悪役像となっている。これほど分かりやすくされると、あとは、多少の犠牲を出しながら、ボロボロになり、最後は曹操を追い詰める周瑜。激しい戦いの描写に多少飽きてきたころに、しっかりとアクセントとしていろいろな道具が登場するあたりも、ポイントを抑えている。

歴史的エピソードと大きく異なるのはすでにPARTⅠからわかっていたことだが、せめて周瑜と孔明の頭脳戦くらいは描いてほしかった。そして、その上で孔明に激しく嫉妬する周瑜の姿も描くべきだったのだろう。そこは赤壁の戦いで大きなポイントとなるはずだったのだが、周瑜は最後までさわやか軍師だった。トニー・レオンがその役をやった時点で、孔明の才能に嫉妬するというのは当てはまらないのだろう。飄々とした表情で、なんでもやりきってしまう孔明の天才っぷりは十分に表現できていると思うが、それをさらに際立たせるために、周瑜の嫉妬が必要不可欠なはずなのだが…。主役周瑜だとそうもいかないのだろう。

PARTⅠの面白さを引き継いではいるが、どちらかというとⅠの方がよかった。Ⅱはほぼ戦いに明け暮れるというような感じだろうか。本作だけ見ると、赤壁の戦いで呉が大勝できたのは、単純に風向きが変わったからだけのように見えてしまう。本来ならそこに至るまでに様々な駆け引きや、コウガイを使った策略などもあったはずだが…。それらは、すべて戦いの時間を捻出するために省かれている。あの激しい戦いのシーンがあったからこそ、三国志初心者でも楽しめたというのはよくわかる。机上であれこれ策略を練るだけの作品であれば、これほどヒットしなかっただろう。女を手に入れるためという単純さもその要因の一つだ。最後の曹操のシーンであっても、なぜそんなことがありえるのか、コアなファンならばまったく納得できる展開ではない。しかし、この世には三国志ファンよりもそれ以外の方が圧倒的に多い。

コアな三国志ファンでPARTⅠを見て期待するとPARTⅡでは少しがっかりするかもしれない。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp