ネバーランド 


 2010.7.11  少年四人の大暴露大会 【ネバーランド】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
冬休み、ひっそりとした寮で繰り広げられる大秘密暴露大会。男子校の寮というと、汗臭い、汚い、足を踏み入れたくないと良いイメージはない。本作では冬休みに帰省せず、寮に残った四人の少年たちの秘密を告白する様が描かれている。男子寮のイメージを覆すクリーンさが物語り全体に漂っている。きっちりと朝昼晩と料理をし、勉強をしてたまにスポーツやカードゲームをする。なんだかひどく健全で綺麗な印象をもった。どことなく草食系男子のように思えたが、中身はそうではない。非常にディープで強烈な体験をしてきた少年たちが、自分の内に秘めた思いを告白する。部活の合宿にも似た雰囲気の中、大暴露大会がスタートする。

■ストーリー

舞台は、伝統ある男子校の寮「松籟館」。冬休みを迎え多くが帰省していく中、事情を抱えた4人の少年が居残りを決めた。ひとけのない古い寮で、4人だけの自由で孤独な休暇がはじまる。そしてイブの晩の「告白」ゲームをきっかけに起きる事件。日を追うごとに深まる「謎」。やがて、それぞれが隠していた「秘密」が明らかになってゆく。

■感想
普段はむさくるしい男子高校生が充満する寮に、冬休みということで帰省しない四人の少年だけが残る。自由で孤独な空間に残された四人の気分が高揚し、大告白大会となる。合宿気分で料理を作る少年たちの姿は微笑ましい。ただ、男子高校生にしてはあまりにきっちりとしすぎた生活と、三食しっかりと料理をするというのは、羽目を外す合宿というよりか、しっかりと規律正しい共同生活のように思えた。普段は普通の高校生であっても、誰にも明かせない秘密がある。それらを告白する場面では、壮絶な人生に圧倒されてしまう。もし、自分がその場にいたら…。とつい考えてしまった。

四人の少年たちがそれぞれ特徴を持っている。ただ、皆基本的には優秀な少年なので、会話と考え方のレベルは高い。将来のビジョンに対してもしっかりと持っている。その中で多少ミステリー風な場面も登場するが、ほとんど意味はない。本作は四人の少年たちが、お互いの思いを口にし、普段の抑圧された生活から解放されたように自由を謳歌する場面が描かれている。複雑極まりない人間関係の中で、翻弄される少年たちの壮絶な人生を読まされると、自分の人生がいかに平凡かを思い知らされる。

男四人というと、どこか危ない雰囲気を感じてしまう。三島由紀夫の「仮面の告白」が登場するあたり、そのへんを狙っているのだろう。ただ、このくらいの年齢の汗臭さの中での背徳な感覚は、中性的な雰囲気を臭わせる部分もあるので、それほど抵抗無く読むことができた。どうしても作者の売りであるミステリー的な要素を求めてしまうが、本作に限っては大どんでん返しはない。最後まで淡々と進むといった方がいいのかもしれない。適度な長さでサラリと読め、男ならば高校時代の汗臭さを多少は想いだすかもしれない。

合宿というのはそれだけでテンションが上がってしまう。本作の少年たちはそんな気分だったのだろう。



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