2010.4.1 余命わずかな女に恋する男 【美丘】
■ヒトコト感想
治療方法も特効薬もない病が発症する可能性のある女に恋をした男の物語。前半までのありきたりな大学生グループでの恋の話はそれなりにリアルに感じたが、心に残ることはない。後半になり、美丘の魅力に気付き、そして、美丘の病気に気付いた後が衝撃的かもしれない。ただ、余命わずかな女と、女を愛する男のラブストーリーというとある程度流れは決まってくる。本作もその定石どおりの流れから外れない。そのため、泣ける人は簡単に泣けるだろう。捻くれた人は…。二人以外の、特に両方の両親がほとんど見えてこないのが気になった。それほど深刻な病になる前に、実家住まいであれば両親の描写も出てくるはずだが、それらがいっさいなかった。ただ、大学生活でのフラフラとした恋愛という印象ばかりが強く残った。
■ストーリー
美丘、きみは流れ星のように自分を削り輝き続けた…平凡な大学生活を送っていた太一の前に突然現れた問題児。大学の準ミスとつきあっていた太一は、強烈な個性と奔放な行動力をもつ美丘に急速に魅かれていく。だが障害を乗り越え結ばれたとき、太一は衝撃の事実を告げられる。彼女は治療法も特効薬もない病に冒されていたのだ。
■感想
不治の病がヤコブ病というのが一番のポイントだろう。脳がスカスカのスポンジのようになってしまう。それも急激なスピードで痴呆症とは比べ物にならないほどだ。そうなってくると、弱ってくる美丘と、それを見守る太一、二人の純愛を描くのが定石だろう。本作は、そこに若者らしい性欲というのを強く印象付けている。このことがストーリー全体に大きく影響を及ぼしているとは思わないが、プラトニックな愛ではないということだ。愛だ恋だと表面的で綺麗な部分だけ描くのではなく、原始的でひどく人間的な部分を描いているのがよかった。綺麗な恋愛なんて、この世には存在しないと思っている。
美丘と付き合うことになる前に、多少の波風が立つ。それは、障害としてはおあつらえ向きの三角関係だ。それも美丘よりも美人で気立てが良いときている。このことで、太一が美丘を選んだことがどれだだけ特別なことかというインパクトになる。作中で描写される美丘には確かに特殊な魅力はある。しかし、誰もが憧れる大学の準ミスをふってまでというのが、ポイントかもしれない。ただ、美丘と付き合うまでは、綺麗なグループ交際の典型のような流れが気に入らない。どこかカマトトぶってる女と、礼儀正しい男。こんな大学生は存在するはずがないのだ。
ラストでは弱っていく実丘と、それを支える太一がしっかりと描かれている。くしくも同じ時期に似たような状況になる映画を見た。寝たきりで瞬きだけしかコミュニケーションをとる方法がないという映画だった。それと比べると、本作の美丘はさらに進行形の症状に苦しんでいるのだろう。絶望的な雰囲気は伝わってくる。そして、誰もが思うような約束を美丘と太一はすることとなる。この約束を太一が果たすのか。そこだけはまったく想像できなかった。明るく希望のある終わり方か、それとも…。ある種の決断を下した太一の最後の行動で、本作の評価は一気に高まるような気がした。
ラストは綺麗ごとでは済まされないが、良い終わり方だったと思う。
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