ラストキング・オブ・スコットランド


 2008.11.5  実話ゆえの衝撃 【ラストキング・オブ・スコットランド】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
アミンの圧倒的な存在感、そして、本作が実話を元にして描かれたという衝撃。すべてにおいて物語からひと時も目が離せない。ただのお坊ちゃま医学生だったニコラスが何かをやりたいという甘っちょろい、若者独特の考えからウガンダへ向かい、そこでアミンと偶然親しくなる。アミンに気に入られるくだりと、そこからアミンの異常さへ気づくまで。ニコラスがどこにでもいるイエスマンに成り下がっていないのには好感がもてた。自分の意見を主張しながらも、アミンの恐怖の前に屈しなければならない苛立ち。ウガンダという国がこれほど暴力にまみれており、対外的には良い指導者としてアピールしていたアミンの内情など、非常に興味深かった。また、俳優たちの熱演もあり、終始目が離すことはできなかった。ホテル・ルワンダとも共通した、実話ゆえのリアリティというのを感じた作品でもある。

■ストーリー

スコットランドの医学校を卒業したニコラス・ギャリガンは、高い志を胸にウガンダのムガンボ村にある診療所へとやって来た。それはちょうど、軍事クーデターによってイディ・アミンが新大統領となった直後のことだった。ニコラスはアミンの演説を聞いて、そのカリスマ性に強く惹きつけられる。そして偶然にも、ケガをしたアミンを救ったことからアミンに気に入られ、彼の主治医に抜擢される。やがてアミンは主治医という以上の信頼をニコラスに寄せ、ニコラスもまたその期待に応えようとするのだが……。

■感想
ホテルルワンダでもそうだが、権力者の横暴に苦しむのは、いつの時代も民衆たちだ。あるきっかけから大統領の主治医の地位にまで上りつめたニコラス。本人にその気がなければ、いくらでも後戻りするチャンスはあったのだろう。その後の流れを見ると、ニコラス自体にも、今の自分の環境に、まんざらでもない気持ちが強かったのだろう。いち主治医が政治にまで口出すほど力を持ち、大統領のアドバイザーにまで出世し、密接な関わりをもつ。その危険性に気づいたときには後の祭り、ニコラスは身動き取れない状態となる。これが独裁政治の恐ろしさかとまざまざと思い知らされる場面だ。

アミンの強烈な存在感。実物もカリスマ的魅力をはなっていたのだろう。その人懐っこい笑顔の裏に隠れた残虐性には、最初からそれを予見させるような態度がいくつか見えていた。それに対して、最初は控えめだったニコラスが、力を持つたびに、力を誇示するようになる。ニコラスは自業自得ともいえるが、ニコラスの行動を全面的に非難できるものではない。うかつな部分もあるが、ウガンダという異国の地で、自分の実力が認められ、大統領から頼られれば、誰だっていい気になるのはしょうがないことだろう。

後半ではアミンの異常さばかりが目についてくる。その残酷描写に目をとらわれがちだが、裏でうごめいている英国人たちの異常さは隠されている。ラストではニコラスがどのようにして、この危機から脱出することができるのだろうか、そればかりが気になったのだが、アミンの手詰まり具合も十分に表現されている。暴力により支配されるのがアフリカだと宣言する世界から、どのように抜け出すのか。支持され、いつの間にか大統領になったは良いが、疑心暗鬼にさいなまれ、体に偏重をきたす。実話を元にしているだけに、このリアルさをヒシヒシと感じることができる。

アフリカの暴力社会というのを如実に表現している本作。アミンの存在感はインパクトがありすぎる。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp