「恐怖の報酬」日記ー酩酊混乱紀行 恩田陸


2010.10.2  超ビール好きな作者 【「恐怖の報酬」日記-混乱酩酊紀行】

                     
■ヒトコト感想
作者のエッセイは初めて読むのだが、かなりの酒好きだということはわかった。飛行機嫌いということ以上に、酒ばかり飲んでいるイメージだ。タイトルにもなっているので、本人も自覚しているのだろうが、それにしてもすさまじい飲酒日記だ。イギリスやアイルランドに行けばパブの話がメインとなり、ビールの銘柄がどうだとかという展開になる。国内であれば、神奈川と北海道と沖縄のビール工場めぐり。本当に酒、特にビールが好きなんだなぁとしみじみ思った。常に酒を飲んでいるというイメージがあるが、それ以外には映画や本の趣味がわりと作者と似ているのだと気付いた。注釈で解説されている細かなウンチクなどが楽しめたのは、好みが似ているせいだろう。

■ストーリー

なぜ「あんなもの」が飛ぶのか未だによく分からない。人間が存在していられないくらい高い高いところ。頭の中は、私の悲鳴と加速する「あれ」の音でいっぱいになるーー。イギリスとアイルランドにはとても行きたい、ビールも飲みたい。だが、飛行機には乗りたくない。番外編3本も収録、初の紀行エッセイ。

■感想
作者が飛行機嫌いだということは初耳だった。たまに極度に飛行機を嫌う人はいるが、作者もそのたぐいなのだろう。旅行といえば、長い飛行機など含めて旅行と考えているので、長時間のフライトをいかに楽しむかは旅行全体を楽しむためにものすごく重要なものと考えている。行き帰りの飛行機が辛いのは、せっかくの楽しい旅行中も常に憂鬱なことと向き合わなければならない。作者は旅行中はほぼそんなそぶりを見せていないが、心の奥底では「日本に帰るためには、あの辛く苦しい経験をまたしなければならない」と思っていたはずだ。

作者の意外な一面といえば、まちがいなく酒好きということだ。ビールが大好きで、旅行先では常にビールの話が先行してくる。行く先々でパブに入り、そこでビールの銘柄にどんなものがあって、どんなつまみがあるのかなどがレポートされている。ヨーロッパへ行っても、ワインにはほとんど手をださず、ひたすらビールばかり飲み続けるのは、作者が真のビール好きだからだろう。国内では各地のビール工場にくりだし、ビールの歴史からビール会社の社員の気質まで、作者の細かな観察眼でレポートされている。

本作を読んでミステリー作家のイメージが大きく崩れることはない。かなりの読書家で、一般的にイメージする作家像とそれほどかけ離れることはない。作者の好みがわりと自分に近いということもあり、知っている作品が作中に登場すると、なんだかうれしくなる。作家業の大変さが影を潜め、出版社の金で好きなビールを飲み歩けるのはうらやましいと感じるが、それはこのエッセイの中だけだからだろう。実際には締め切りに追われ、強引に時間を作ってビール工場の見学に行っているような気がした。この作者は作家としての苦しさをほとんど表にだしてこない。

作者の初のエッセイということで、ビール好きというイメージが植えつけられた。



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