クレオパトラの夢 恩田陸


2010.9.5  モヤモヤしたまま終わる 【クレオパトラの夢】

                     
■ヒトコト感想
MAZEの続編ということだが、そんなことは一切関係なかった。キャラクターのみ引き継いでいるようだが、特別な印象はない。MAZEはキャラクターの面白さがメインだったわけではないので、本作は特別な先入観なしで読むことができた。クレオパトラという謎の言葉が独り歩きし、大きな謎があるように思わせておきながら、実はたいしたことがない。冷凍ミカンの話は面白かったが、MAZEほどドキドキワクワクとした感覚はない。主人公である恵弥が何かを知っているが、はっきりと示さない。そのため、モヤモヤとした気持ちばかりが続いた。ラストでそのモヤモヤをすべてすっきりと解消してくれるかと思いきや、ダラダラと垂れ流すように小出しにされた。なんだかメリハリをほとんど感じなかった。

■ストーリー

シリーズ第一作『MAZE』で非凡な才能を見せた神原恵弥。その彼が北国のH市を訪れた。不倫相手を追いかけていった双子の妹の和見を連れ戻すためだが、もう一つ重大な目的があった。それはH市と関係があるらしい「クレオパトラ」と呼ばれるものの正体を掴むこと。人々の思惑や駆け引きが交錯するなか、恵弥は何を知ったのか。

■感想
MAZEは生命を持った洞窟か?というオカルト的でもあり、不思議な雰囲気がよかった。不思議な謎を追い求めるといった感覚があった。それに比べると本作は謎を追うには追っているのだが、登場人物たちの誰もが知っているが口に出さないというように、秘密を引っ張り続けている。恵弥が頭の中で推理することは、ある程度の事前知識があってこそのことなので、なぜそう思うのか?なぜ秘密を隠しているのか?ということが一切共感できなかった。

クレオパトラという言葉を使い、何か大きな秘密があるように匂わせてはいるが、結局言葉ばかりが独り歩きしたような感じだ。ウィルスなのかワクチンなのか、駆け引きの中で繰り広げられる、「人を疑う」という行為。双子の妹でさえも、何か秘密を抱えているように表現し、誰が味方で誰が敵かわからない展開。ミステリーとしての面白さをどの程度感じることができるか。恵弥が特殊な話し方をするので、会話のシーンになると誰が誰の言葉か混乱する可能性がある。ミステリー的な部分に集中できない要素かもしれない。

ラストに壮大なカタルシスを期待したが…。物語のキーマンたちがラストに向かうにつれて、仲良くなり、利害関係が対立するはずが変にナアナアな雰囲気が流れている。クレオパトラの夢というタイトルのオチはそれなりに感じることができるが、結末に一気に答えがでるのではなく、中盤以降からダラダラと垂れ流しにされたような気分なので、メリハリを感じなかった。怒涛の展開でラストまで流れるような感じであれば、また違った感想を持ったのだろう。

MAZEの続編ということを抜きにしても、なんだか微妙な読後感だ。




おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp