2010.11.5 二匹目のドジョウは難しい 【暗闇の中で子供】
■ヒトコト感想
煙か土か食い物の続編。衝撃的な前作の雰囲気そのまま、前作で残った謎が本作で明らかになるのかと思いきや…。やはり最初の衝撃を越えることは難しい。一発目のインパクトはすばらしいが、同じ文体で同じ雰囲気で、さらには特別なオチがない。そなってくるとかなり厳しい。前作にも増して残虐性がアップしているが、核となるストーリーが散漫で、物語としてのあらすじがほとんどみえてこなかった。前作で興味深かった奈津川兄弟というキャラクターを、本作で無駄に消耗してしまったような感じだ。ミステリーとしての面白さがほとんどないのは前作同様。興味を惹かれるエピソードも前作ほど強烈なものはなかった。スピード感は抜群だが、目新しさを感じるのは一作だけ。二匹目のドジョウは難しい。
■ストーリー
あの連続主婦殴打生き埋め事件と三角蔵密室はささやかな序章に過ぎなかった!「おめえら全員これからどんどん酷い目に遭うんやぞ!」模倣犯(コピーキャット)/運命の少女(ファム・ファタル)/そして待ち受ける圧倒的救済(カタルシス)……。奈津川家きっての価値なし男(WASTE)にして三文ミステリ作家、奈津川三郎がまっしぐらにダイブする新たな地獄。
■感想
前作は四郎目線の作品だったが、本作は三郎目線の作品となっている。物語の鍵を握る二郎関連の話が常に付きまとい、何か大きな裏があるのではないかという雰囲気は常にある。しかし、結局は前作と同じで、残酷極まりない事件が発生し、それの犯人をいつの間にか捕まえてしまう。犯人にしても、練りに練って準備されていた犯人ではなく、どこかポッと出の間に合わせキャラクターのような気がしてならない。伏線を駆使したミステリーとしての面白さというのを、本作に求めるべきではないのだろう。
前作では奈津川家の描写が抜群にすばらしく、家族関係のエピソードに興味を惹かれてしまった。本作はそれら家族を扱いながら、新たなキャラクターを登場させ物語に深みをつけようとしたのかもしれない。しかし、新キャラクターのサイコ部分ばかりが強調され、裏に隠されたエピソードやもっと人間的な何かを読み取れなかった。作り物の間に合わせ急増キャラクターが多数登場し、主人公である三郎と絡みながら、死ぬか行方不明になって終わっていく。まともなストーリーとしての整合性がほとんどないが、それがこの作者の特徴かもしれない。
相変わらずの独特な文体はすばらしいのか、どうなのか。二作目ともなると慣れもあり、飽きもある。文章を2、3行読めばすぐに作者の文章だとわかる文体はすごいのかもしれないが、それが直接本作の評価に繋がるとは思えない。圧倒的な残虐性と、信じられないようなストーリー。そして、常識では測れない物語の展開と、誰も想像できないキャラクターたち。むちゃくちゃで何でもあり、一作目のすばらしさが、勢いにのって思わず本作を完成させたということなのだろうか。強烈すぎるインパクトだが、前作にはかなわない。
謎が謎のまま残されているのは前作と同様だ。
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