クライマーズ・ハイ


 2009.4.5  魂が熱くなる 【クライマーズ・ハイ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作を読んだときの熱い思い。それがはたして映像としてどのように表現されるのか。そんな心配はまったく関係なく、すばらしい出来栄えだった。新聞社内部での熱い思い。大部屋での激しい議論。一人ひとりの真剣な表情。すべてが新聞にかける熱き思いとなって現れている。強烈なスクープ争いと、上層部との対決。全権デスクをまかされた悠木の行動には、同じ社会人として熱い気持ちを感じずにはいられない。モラルや真実、報道のあり方など、いろいろと問題提起しているが、一番しびれるのは単純に上司への反抗だろう。自分に自信があり、確固たる信念がある。だからこそできる行動だ。文字で読むよりも、映像で見せられるとそのインパクトも大きくなる。魂が熱くなるような作品だ。

■ストーリー

群馬県,北関東新聞社。地元が現場となった,航空機事故の全権デスクに任命されたのは,組織から一線を画した遊軍記者・悠木和雄(堤真一)だった。モラルとは?真実とは?新聞は<命の重さ>を問えるのか?プレッシャーに押しつぶされながらも信念を貫き通そうと必死にもがいた悠木が見たものは?これはあの暑かった夏をひときわ熱く駆け抜けた新聞記者たちによる濃密な日々の記録である。

■感想
原作者は元新聞記者。当然、自己の経験も含まれているだろう。原作を読んだときの衝撃をそのまま、まさか映画から受けるとは思わなかった。原作を読んだ直後に、映像化したらヒットするという予感はあった。しかし、それがこれほどすばらしいものになるとは思わなかった。コンパクトにまとめられたとはいえ、二時間を越える作品なのだが、はっきり言えば時間はあっという間に過ぎ去った。終始目を離せないと言ってもよい。一つの記事にかける熱い思い。全権デスクを助けようとする仲間たち。嫉妬心から邪魔をするが、最後には悠木を助けようとする上司たち。全てが熱い男たちの物語として成り立っている。

原作のすばらしさを十分活かしているのは当然として、映画独自の味付けもよかった。スピード感あふれるカット割。議論する場面では、憎たらしいほど相手を威圧しながら話す上司たち。それぞれのキャラクターがはっきりとしており、印象的な場面も多い。記事一つとっても、さまざまな人の思惑から、右往左往する。地方新聞社の内部でのさまざまな軋轢。それらが困難であればあるほど、悠木のすばらしさとかっこよさばかりが目立ってしまう。航空機事故という一大事件を取り巻く現状と、雑観記事をめぐる争い。なんだか、新聞記者とはものすごく大変な仕事だが、それ以上にやりがいや生きがいとなるべき仕事なのだという感想をもった。

悠木の行動には人を熱くさせる何かがある。上には煙たがられ、下には慕われ、同期には頼りにされる。世渡り上手ではない部分もすばらしい。悠木の行動一つ一つに、ただのサラリーマンでしかない観衆は憧れの気持ちで眺めることだろう。親子関係や山に対する思いなど、この際どうでもよい。本作のすべては、新聞社内部での上司たちと悠木の戦いの記録であるし、作り手もそこを見てもらいたがっているのだろう。悠木のように自分の信念を貫き通したい。上司と反発してでも、やり遂げたい。なんだか、仕事に対するモチベーションと共に、変な反抗心までもが根付いてしまったような気がする。これほど興奮させられる映画は久しぶりだ。

原作の面白さを十分に引き出し、さらに映画独自の味付けをした、すばらしい作品となっている。



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