2008.8.31 シリーズラストにふさわしい 【きんぴか3 真夜中の喝采】
■ヒトコト感想
きんぴかシリーズのラストを飾るにふさわしく、三人それぞれがまるで映画の主人公のように物語が展開されていく。三人の個性が存分に生きるエピソードでありながら、今までになくスリリングでミステリアスな物語となっている。内容的にもそれだけで一冊終わってしまうほど濃密なものなのだが、三人分のエピソードを語るということで、あっさりと終わっている。後日談的なものは勝手に想像してくださいと言わんばかりに、何も描かれていない。気分的にはもう少し続きが読みたかったのだが、さらりと終わってしまう。あまりにあっけない終わり方なので、次のエピソードが始まっても、これは何か続きなのだろうと最初は思ってしまった。このほんの少しの物足りなさが良いのかもしれない。
■ストーリー
草壁明夫が殺された。広橋をスケープゴートにした大物政治家・山内龍造の悪行を報道した、あの気鋭のジャーナリストが…。訃報を耳にした広橋は凍りつき、草壁に伝え忘れたセリフを口にするために立ち上がる。一方ピスケンと軍曹は、ヤクザと悪徳政治家が自己弁護と保身に走るなか、正義の暴走を敢行する。三悪漢の破天荒な物語、ひとまず完結。
■感想
ひとまず完結する本作。三悪人と呼ばれてはいるが、全然そうは思えない、義賊的な働き。あちこちにちりばめられているギャグもそうだが、作品自体のテンションの高さと、作者が楽しんで物語を描いているというのがあちこちに伺える。深刻な話の中にも、ちょっとしたユーモアが含まれており、そこで少し安心したりもする。到底ありえないような展開や、絶対にそうならないだろうという、大げさすぎる結末などもあるが、漫画的な流れはエンターテインメントとしては十分楽しめる作品だった。
三悪人の個性がまったくバラバラでありながら、それぞれの特徴を活かし活躍する。どちらかと言えば、三悪人の周りにいる人々の方が(特にピスケンの周りの人々)かなり迷惑を受けているように思えるのだが、笑って許せる度量の広さが、本作を何か大らかなものに昇華しているのかもしれない。周りにいればかなり迷惑な三人で、敵にまわしたらこれほど恐ろしいトリオはおらず、味方につければ、心強くなんでも解決できそうな、そんな頼りがいもある。
シリーズとしてのラストを飾るように、最後はピスケンにある出来事が起きる。ここだけ無理やり終わらせようとしたのか、ちょっと強引過ぎるようにも感じた。いつもの面白エピソードもパワーダウンしており、インパクトの面でもちょっと弱いように感じた。三者三様の生き方しかできない三人が、今後どうなっていくのか、まっとうな死に方はできるはずがないのだが、できれば、歳をとって孫ができる年代になっても三人で集まって茶飲み話をしているような、そんな続編をちょっと期待してしまった。
シリーズとしての面白さよりもキャラクターのインパクトがでかい作品だ。
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