きみの友だち


 2010.3.30  見終わると心が温かくなる 【きみの友だち】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作を読んだ時とはまた違った印象をうけた。原作ではとにかく女のイジメとは恐ろしいという印象が強く。自分の知らないところで、陰湿なイジメが繰り返されていたのではと思った。しかし、本作では女のイジメというよりも、全体的に心に何かやりきれない部分を持った少年少女たちを描いているような気がした。登場するのは、クラスの人気者ではない。どこか日陰な存在で、一歩間違えると陰湿なイジメのターゲットになってしまいがちな者ばかりだ。思春期の微妙な時期で、誰もが感じるちょっとした嫉妬や嫉み。そして、人とは違うという意識。自分自身がそうではなかったとしても、かならずどこかリアルに感じる部分があるはずだ。なんだかむしょうに中学時代を思い出してしまった

■ストーリー

交通事故の後遺症がきっかけで、まわりに壁を作って生きてきた恵美。幼い頃から体が弱く、学校を休みがちなおっとりした由香。クラスで浮いてしまいがちな2人は、ある日を境にかけがえのない絆を深めていく―――。彼氏が出来た親友から相手にされず悩む同級生のハナや、恵美の弟ブンのクラスメートで自分に自信が持てない三好君、恋心を抱く琴乃に振り向いてもらえない佐藤先輩。それぞれが迷いながらも毎日を過ごしていく中、由香の体調は日に日に悪化していくのだった。

■感想
本作の主人公である恵美。彼女のかすれたような話方が実はものすごく原作の雰囲気がでていると思った。原作を読んでいなければ、単純に聞き取りにくいだけと思うだろうが、どこか世間に対して反抗的で、一人悟りを開いたような、子供らしくない印象だ。まわりに壁を作って生きたきた女が、様々な友達に出会う。そこで、壁が解けていくのではなく、友達に対してただそばにいるだけ。恵美が最後にはしっかりと幸せになっているあたり、希望がもてる終わり方で、それまでの不幸や悲しみが一気に吹き飛んでしまったような感じだ。

女子から陰湿なイジメにあう同級生のハナや、恵美の弟の幼馴染の三好君。淡い恋心をいだきながら、どうしてよいのかわからない佐藤先輩。どこにでもいるリアルな少年少女たちを描いているので、誰が見ても少しは思い当たる部分があるのだろう。特に自分は補欠だったくせに、卒業してからも執拗に後輩をいびりに部活へ参加する佐藤先輩。これは、叶わない恋への苛立ちをぶつける先がみつからずに、手近にある部活の後輩にぶつけているという典型だろう。ただ、この佐藤先輩にしても、嫌な感じはしない。それぞれの悩みや苦しみは青春独特のもの。恵美との会話で佐藤先輩の心が変わっていくのがはっきりと感じ取れた。

映画として、ハラハラドキドキするような場面はない。そこにあるのは、ちょっとした日常にある青春時代の悩みや苦しみだ。極端に会話の場面が少なかったり、ポツンと立ちつくした絵が続いたりと、心の孤独感が画面からにじみ出ている場面もある。イジメや恋に対してはっきりとした解決策を提示しているわけではない。本作を見て、勇気をもらい新しい一歩を踏み出せる類のものでもない。ただ、見終わると心が温かくなり、見てよかったなぁという気分になってくる。

ハリウッド大作に飽きてきた人は見ると気分が変わってよいだろう。



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