機動戦士ガンダムUC 7 福井晴敏


2009.4.2  立場が変われば価値も変わる 【機動戦士ガンダムUC 7】

                     
■ヒトコト感想
なつかしのMSが登場し、地球で時を待ち続けたテロリストたちが動き出し、ゲリラ的な戦いを繰り広げる。骨董品ともいえるMSで懸命に戦う姿は、このシリーズにふさわしい。地球連邦とジオン。どちら目線で語られているかというと、今のところはっきりしない。しいて言えば、主人公であるバナージが付く方の目線で書かれている。そうなると必然的に前巻と本巻はジオン目線となる。あのブライト艦長が登場したとしてもその流れは変わらない。へたすると、すべてのガンダムシリーズで正義の艦長を務めてきたブライト艦長でさえ、対立する側になる可能性がある。このフラフラとしたどっちつかずな感覚は、物語のテーマと共に何が正しくて、何が間違っているのか。まだはっきりしない現状を表しているのだろう。

■ストーリー

虜囚となったバナージを乗せた戦艦「ラー・カイラム」が寄港したトリントン基地に積年の妄執を決死の志へと変えたジオン残党軍が襲いかかる。混乱の中、ブライト艦長の言葉を胸に再び「ユニコーン」に乗り込んだバナージは、目の前で再び連れ去られたミネバを奪還するため、ついに大空へと飛翔する!黒き「ユニコーン」との対決が待つ高高度の戦場で、バナージがつかんだものとは―!?

■感想
とうとうブライト艦長が登場した。ただ、物語の性質上、バナージがラー・カイラムの一員となって日常的に戦闘に繰り出すなんてことは決してないのだろう。そればかりか、バナージとジネンマンとの強いつながりから、もしかしたらジオン側になる可能性すらある。そうなってくると宿命のライバルであるフルフロンタルとの対決がどうなるのかと、いろいろと考えてしまう。勧善懲悪ではなく、立場が変われば、それぞれの正義がある。それを体言するかのごとく、バナージは迷走していく。今後の物語の流れを決める重要な巻であることは間違いない。

本作はまちがいなくジオンメインとなっている。時期を待ち続け、旧式のMSで最新MSに立ち向かう。その男気というか、仁義を通す熱い気持ちをしっかりと感じることができた。そして、戦闘の後には、その傷跡を生々しく描いているのも本作の特徴かもしれない。前巻で登場した黒いユニコーン。そして、激しい戦い。強化人間とそれを管理する男たちの葛藤も描かれている本作。一体だれが純粋に悪くて、圧倒的に正しいのかはわからない。どちらの言い分も正しく、立場が変われば、それが正義となる。ラプラスの箱をめぐる争いの中には、リディを含め、私的な感情をあらわにするものもいる。それも理解できるだけに、物語はより深みに嵌っていく。

今後バナージはいったいどちら側につくのか。まさかブライトと戦うということはないと思うが…。物語的にはジネンマンといやいやながら戦うというのもありえる話かもしれない。マリーダやミネバ、そしてリディ。輻輳する感情と、現実。ガンダムシリーズにふさわしく、人の心が重要な鍵となっているようだ。少し気になるのが、本作のペースでいくと、そうとう長くなるということだ。まだまだ先が見えてこない物語。新しいMSも大量にでてくるだろうし、新たなキャラクターも登場するだろう。なんだか、やっと登場人物紹介が終わり、これから物語りは本格的に進んでいくというような流れとなりそうな気がする。

ブライトが登場し、ハヤトの名前もでてくると、否が応でもシリーズの雰囲気がぐっと強まる。

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