2010.5.11 ガンダムらしい物悲しさ 【機動戦士ガンダムUC 8】
■ヒトコト感想
物語もクライマックスが近いようで、主要キャラクターは勢ぞろいし、物語の方向性もはっきりしてきた。フル・フロンタルが何のためにラプラスの箱を探すのか、バナージの迷走とジネンマンの苦悩。今までと違い今回はユニコーンはほとんど活躍しない。あるのは、政治的駆け引きと末端の兵士にまで戦う意義を考えさる流れ。味方だった者が敵となり、敵だった者たちと強力する。皆が待ち望むフル・フロンタルのカリスマ性と、定番的なバナージの優柔不断さ。人の心の葛藤と希望を描く。特に、虐げられジオン再興を願う共和国軍兵士たちの哀愁漂う戦いぶりと、ジオンに対する盲目的な信仰が不幸を冗長している。ガンダムらしいといえばらしいが、あっけなく宇宙のチリとなってしまうのは、物悲しさを感じずにはいられない。
■ストーリー
「ラプラスの箱」をめぐる物語も佳境にさしかかる。ガランシェールと行動を共にすることになったネイル・アーガマの面々。バナージとオードリーはユニコーンが示す座標へと向かう。そんな二人のもとにフル・フロンタル操るシナンジュの魔の手がせまる。そのとき、満身創痍のマリーダはクシャトリヤを動かし…。
■感想
物語は佳境に入り、主要モビルスーツは勢ぞろいする。フル・フロンタル、バナージそしてリディとおそらくこの三すくみ状態がラストに大きな影響を及ぼすのだろう。好青年だったはずのリディは異常性を際立たせ、フル・フロンタルは不可解さをアップさせている。本作を読むと正体は決定的なような気もするが、それは今後語られることだろう。バナージとオードリー二人の関係も、主張がいまいちはっきりせず右往左往しているようにも感じられた。これはラプラスの箱がいったいどのような効果をもたらすか不明なだけに、はっきりと自己主張させずらいのかもしれない。
本作ではユニコーンはほとんど活躍しない。代わりに圧倒的な力を示すシナンジュとトライスターの戦いがある。ユニコーン、シナンジュ、そしてリディがのる2号機。この戦いはどのように決着がつくのか。主要キャラクターであってもあっさりと殺す本作においては、どんなキャラクターも最後まで生き残ると安心できるはずがない。ラストはもしかしたら壮大なカタストロフィかもしれない。すでに本作でもそれなりにしっかりとキャラ付けされたジオン再興を願う共和国軍が、あっさりと宇宙のもくずとなっている。
「ラプラスの箱」とはどんなものなのか。これが本シリーズのすべてといってもいいだろう。これがとんでもなく期待はずれなものだったら、今までの戦いはなんだったのかということになる。逆にそれをバナージたちに認識させるというのもあるが、相当にインパクトがあるものでないとラストは締まらないと思う。クライマックスに向け、激しい戦闘は避けられない。そうなってくると、マリーダをはじめ、ネイル・アーガマの主要メンバーさえも危ぶまれる。カタストロフィによってラストにインパクトを与えるというのもあるのだろう。本作でクライマックスに向かう準備は整った。あとは激しい戦いを待つだけだ。
本作単体では非常に政治的というか、勢力関係の話に終始している。
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