機動戦士ガンダムUC 6 福井晴敏


2009.3.30  初代ガンダム的香り 【機動戦士ガンダムUC 6】

                     
■ヒトコト感想
明らかにファーストガンダムを意識した流れ。巨大なモビルアーマーが登場し、圧倒的な力を示す。これはまさしく初代ガンダムのビグ・ザムだ。主人公であるバナージと事前に出会っているのも、その後の展開を考えると悲しみを誘う場面でもある。正統なガンダムシリーズとして、しっかりと初代を意識しており、面白さも引き継いでいる。政治的駆け引きや、ユニコーンのライバルとなるべき黒いユニコーンまで登場し、今後の展開を示す上でも申し分ない伏線となっている。そして、本作の特徴ともいうべき戦いの犠牲者たち。それは、一般市民であっても同じ事で、戦いの陰には計り知れないほどの犠牲を伴い。実数としてだされるとそのインパクトは相当なものだ。

■ストーリー

“ユニコーン”が示した次なる座標は地球連邦政府首都・ダカールだった。ラプラス・プログラムが示した地に“ユニコーン”を立たせるべく、イスラム系反政府勢力のダカール襲撃計画に協力するバナージたち。しかし積年の怨讐は、巨大MA“シャンブロ”が吐く炎となって暴走を始める。首都を飲み込む炎を前に、バナージが選び取った行動とは…!?

■感想
連邦軍の首都に突然舞い降りた巨大なモビルアーマー。首都としての機能がこれほど圧倒的に蹂躙されるなんてことが普通にあるのだろうか。主人公であるバナージが連邦とジオンどちらの側につくというものではなく、そのときそのときで、個別に判断して行動する。政治的な駆け引きと、それぞれの主張。どちらがはっきりと善悪を区別することができないのであれば、個人の価値観で行動するしかない。首都ダカールを圧倒的な力で攻撃するジャンブロに立ち向かうバナージの行動は正しいように思えた。ただ、軍として考えれば、その立ち位置はあいまいでしかない。

ユニコーンのライバル的MSとして登場した謎の黒いガンダム。そして、そのパイロットは…。まさに今までのガンダムシリーズ同様、ここにもしっかりとしたドラマが準備されている。シリーズの永遠のテーマというべきニュータイプ。その答えが本作ででるとは思えないが、よりその重要性が際立つのは本作なのだろう。なにせ、特別な人間しか操作できないMSであり。その圧倒的な力と隠された秘密を暴くために、様々な組織が必死になっている。ここまで大規模にされてしまうと、ラプラスの箱というのがどのようなものなのか、それを考えずにはいられない。

この巻では、特別に人と人との繋がりが鍵となっているようにも思えた。バナージが触れ合う人々。敵味方とはいえ、人間の本質は悪くは無い。しかし、一つのボタンの掛け違いで、大きな差がうまれてくる。生身の人間であれば何の問題もない人物が、モビルアーマーに乗りこむことで、圧倒的な悪となる。この流れは悲しさを感じずにはいられない。初代ガンダムから引きずってきた流れとはいえ、そのインパクトの大きさはパイロットがどれだけフューチャーされているかにも関わっている。本作はまだまだ序の口だが、これから先、決して避けて通れない道なのだろう。

初代ガンダムの匂いを存分に感じることのできる作品だ。

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