ジェリー


 2009.3.31  間違いなく普通ではない 【ジェリー】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
非常に癖のある作品だ。登場人物はほぼ二人っきり。ひたすら広大な景色を眺めることに終始する。寝不足状態で見たら眠ってしまうのは確実かもしれない。作品全体の雰囲気としては、間違いなく普通ではなく、それだけに、はまる人にはハマる作品だ。ゆっくりと流れていく景色。最初は冗談を言い合っていた二人が、いつの間にか無口になる。最後には喧嘩状態になるのかと思いきや、意外なほどクールに淡々と歩き続ける。最後の展開はかなり予想外だった。このゆっくりとした時間の流れ。じわじわと真綿で首を絞められていくような感覚。実話とわかっているだけに自分がそうなったらと想像すると、恐ろしくなるのは確実だろう。このリアル感を感じることができるかどうか…。

■ストーリー

砂漠をドライブ中、休憩のために車を降りた二人の男は荒野で道に迷ってしまう。3日間彷徨った末に死に直面した二人を待っていたものとは…。

■感想
もともとの目的がはっきりしないまま、軽装で荒野へ降り立つ。自由な時間を謳歌するために、フラフラとさまよう様は楽しさを感じさせる場面でもある。それが一転、元の道へ戻れなくなると…。とたんに事態はサバイバルの様相となるはずが…。二人は至って軽い気持ちでどうにかなるだろうという雰囲気を終始漂わせている。食料も水もない状態で一夜を明かしても、まったく焦ることはない。もしかしたら、焦りを表にださず、平静を装っているだけなのだろうか。丘や山へのぼり、あたりを見回す。そのとき何も出口が見えなければ、絶望に打ちひしがれるはずだ。しかし、本作はそれをもっともらしく見せることはしない。静かに「くそぉ」とつぶやくのみ。これが本来のリアルさなのだろう。

圧倒的な景色の連続。動きは少なく、画面としての変化も少ない。ストーリーとしては何もなく、ただ荒野をさまようだけ。はっきり言えば10分くらい見逃したとしても、そこに大きな変化はない。それでも、すべてを通して見ることで、物語のリアルさを感じることができる。ちょっとしたハプニングや、水を求めさまよう様。幻覚を見ながらも、どうにかして先へ進もうとする生きる意志。自分たちが駄目かもしれないと思う描写は、ほとんど最後まででてこない。しかし、内心ではどこかのポイントでそう思う部分があったはずだ。しかし、それを読み取ることはできなかった。

ラストの展開は、なぜそのような行動をとったのか、考えさせることにあるのだろう。後の祭りというか、結末を見て感じたことは、なぜ?という思いと、もう少し頑張っていればという強い後悔だ。二人がにっこりと微笑み、今回の出来事を武勇伝として語れるような結末を望んでいたが、この終わり方だからこそ作品として成り立ったのだろう。本作は決して商業的に成功する作品ではない。マット・デイモンが出演しているが、話題性は皆無だったことからも容易に想像ができる。荒野をさまよう怖さは、ちょうどオープンウォーターで海の真ん中に放置される怖さに似ていると、とっさに思った。日本では考えられないことでも、絶望感を引き起こす景色には、圧倒されてしまう。

見る人を選ぶ作品なのは間違いない。この恐怖感を味わうことができるのは、飽きずに見続けた人だけだ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp