Gボーイズ冬戦争-池袋ウェストゲートパーク7 石田衣良


2010.1.18  常に旬なネタを使っている 【Gボーイズ冬戦争-池袋ウェストゲートパーク7】

                     
■ヒトコト感想
表題作でもあるGボーイズ冬戦争。メインはもちろんGボーイズだが、マコトがいつもどおり、それぞれの組織間の緩衝材となる。マコトの役割というのは常にこの手のことで、そのほかに強烈な何かがあるわけではない。相変わらず旬なネタを題材とし、マコトが大活躍する。ただ、今回は、事件の深刻度でいうと、それほどでもないので、自然と緊張感が薄らいでいくような気がした。Gボーイズ冬戦争は、得たいの知れない大きな力を感じるが、それもタカシの力を引き立たせるものでしかない。トラブルシューターとしてのマコトがどんどんと洗練されていくが、昔のようにドタバタするマコトというのも読んでみたいような気がした。

■ストーリー

鉄の結束を誇るGボーイズに異変が生じた。ナンバー2・ヒロトの胸の内に渦巻く、キング・タカシに対するどす黒い疑念。Gボーイズが揺らげば、池袋のパワーバランスも破綻しかねない…。タカシの危機にマコトはどう動くか?

■感想
何かトラブルが起きると、マコトが調査しトラブルを解決する。その後は、トラブルの元凶に対してお仕置きのようなことをする。定番のパターンではあるが、悪者が痛い目をみると、それに対して心がすっきりするというのがある。ある意味このすっきり感を求めてこのシリーズを読んでいるというのもある。「詐欺師のヴィーナス」などは事件の解決というよりも、トラブルが発生するまでの心理や状況をわかりやすく説明しているような感じだ。これはこれで、強引にまるくおさめるよりも、自然な終わり方かもしれない。

本作のメインである「Gボーイズ冬戦争」は確かに壮大な物語でドキドキワクワクする。ただ、初期の「サンシャイン通り内線」と比べると若干インパクトに欠けるような気がした。”影”という得たいの知れないつわものが現れたというのもあるが、どうも安易にタカシの力を示そうとしているように思えた。誰もが恐れる”影”という人物をいきなり登場させ、それと同等の力をもつタカシというのも、ありきたりな少年漫画のような気がした。悪くはないが、シリーズとしてはもっとひねくれた展開を予想していただけに、ちょっとがっかりした。

振り込め詐欺や気の弱いオタクに絵を売りつける女の話など、旬なネタを提供している本作。そのころに、なんでこんな詐欺に引っかかるんだろうと誰もが思ったことを代弁するように、マコトが事件のカラクリを暴いてくれる。どちらも最終的に全てが解決しているわけではない。結局、振り込め詐欺は続き、絵を売りつけられるオタクは減らない。マコトが平和を願い、悪を根絶やしにしようなんて思わない性格なのは好感がもて、この楽なスタンスが好きになってしまう。

シリーズとしての雰囲気は引き継いでいるが、本作に対しては好みが分かれるかもしれない。



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