2009.11.9 切れ味鋭い短編集だ 【池袋ウェストゲートパーク】
■ヒトコト感想
かなり昔にドラマで見たことがある。本作はドラマの原作ということもあって、頭の中に思い浮かべるのは長瀬であったり窪塚であったりする。ドラマはずいぶんとコミカルで面白かった印象があったが、原作は違っていた。多少のユーモアは交じってはいるが、基本的にはシリアスだ。ドラマがどれだけフィルタリングしていたかが良く分かる。かなり危険な描写や、少年たちの暴走がはっきりと描かれている本作。ここまで残酷なエピソードはドラマではなかったという思いもある。本作が発売された当時の池袋の雰囲気はよくわからない。しかし、カラーギャングが問題になっていたことが、如実に反映されている。短編集ということで、シンプルでいて切れ味するどく、新しさを感じる作品だ。
■ストーリー
刺す少年、消える少女、潰しあうギャング団。池袋西口公園にたむろするハイティーンたちを主人公に、ストリートの「今」を鮮烈に描く青春群像。
■感想
主人公である誠の一人称で語られる本作。誠がライターになったということで、誠目線なのだろうが、最初はそれに少し戸惑った。若者らしさというか、ぶっきらぼうな感じは良く出ているが、逆にそれが読みにくさを誘発していた。しかし、それも中盤以降はまったく気になることはない。誠がギャングの雰囲気をバリバリだすのではなく、ただ実家の果物屋を手伝う若者で、ギャングたちとは一線を引いている。しかし、ギャングのボスたちと話ができ顔がきく。そんな特殊な関係が、物語を面白い展開へと引き込んでいく。誠が激しさを全面に押し出したギャングだったら、ただのヤンキーものとしてこれほど面白くはならなかっただろう。
それぞれの短編は特徴的で、ショッキングでもあり、切れ味鋭い。池袋という場所にこだわるのではなく、そこに関わる様々な利害関係者や、若者の無軌道さを描いている。もちろん、それらに対して説教臭いことを言うのではなく、現状を語りながら、誠は必死に解決しようとする。ギャング同士の抗争の場面では、誠が両方のボスと話をつけ、事態を解決へ導こうとする。一瞬思ったのは、どの組織にも属さない誠のような存在は、組織に属する者にとってはやっかいなだけではないだろうか。最初からどこか一目置かれていた誠の立場というのだけが、少し気になってしまった。
本作は短編でシリーズ化されているようだ。ドラマもそうだったが、魅力的なキャラクターが多数登場し、強烈なインパクトを残している。頭の中にかすかに思い浮かぶ俳優たちの顔。その状態で本作を読んでみると、かなりイメージがしやすいだろう。今となってはこのストリートの「今」というのは古臭く感じてしまう。今ならば、また違った物語が出来上がるだろう。ミステリー的でもあり、青春物語的でもある。様々な要素が詰め込まれており、短編としての簡潔な内容がよかった。本作の長編バージョンも読んでみたい気がするが、短編だからすっきりとした後味になるのだろう。
ドラマと原作は大きくイメージが異なるが、原作は特殊な面白さがある。
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