少年計数機-池袋ウェストゲートパーク2 石田衣良


2009.11.14  現実の事件を連想させる 【少年計数機-池袋ウェストゲートパーク2】

                     
■ヒトコト感想
前作の流れを引き継ぎ、池袋で巻き起こる事件にマコトが関わっていく。前作以上に強烈で切れ味するどく、そして残酷でシリアスだ。池袋という街の複雑さと、少年たちの危険な衝動。本作は単純な虚構として読むにはあまりにも現実の事件を意識しすぎている。表題になってる少年計数機などはまだ良い方だが、その他の作品は実際に起こった事件を参考にしているのだろう。短編を読み終わると、どこかしんみりとして、頭の中には池袋で動き回る少年たちの姿が思い浮かんでくる。特別印象に残っているのは、本作のために書き下ろされた最後の短編だ。いつにも増してシリアス感が強く、マコトたちよりも、ボディーガードであるミナガワが最も強く印象に残っている。かなり強烈なインパクトだ。

■ストーリー

自分が誰なのか確認するために、まわりのすべてを数え続ける少年・ヒロキ。その笑顔は十歳にして一切の他者を拒絶していた!マコトは複雑に絡んだ誘拐事件に巻きこまれていくが…。池袋の街を疾走する若く、鋭く、危険な青春。

■感想
マコトが様々な事件に巻き込まれていく過程でかならず登場してくるGボーイズと安藤崇。本作には欠かせないものなのだが、Gボーイズと安藤崇がいるおかげでマコトという、ただの果物屋の店番が大きな力をはっきすることができるのだろう。その気になれば大きな力を使うことができるが、興味がなく、日がな一日池袋の西口公園でぼんやりすることを好む。しかし、いざとなれば、Gボーイズの協力という巨大な力を使って、事件を解決しようとする。マコトのどこを目指しているかわからないゆるさが、本作のシリアスでストイックな部分を和らげているのだろう。このバランスが絶妙なだけに読んでいて心地よくなってくる。

表題にもなっている「少年計数機」。これは、特殊な状況と、ヤクザとの関わりを避けたいマコトが、自分の信念を貫くために、関わらざるお得ないという話だ。あるときは二人合わせて140歳以上の老人と友達となり、またあるときは小学生と親友となる。いかにもギャングといった雰囲気をださないマコトが、西口公園で交友関係を広げていく。マコト一人の力ではなく、周りの協力があってこそマコトが生きてくる。強烈なインパクトを残すタカシを含め、周りのキャラクターの秀逸さが、本作をすばらしいものへと昇華しているのだろう。

本作の中で最も印象に残っているのは「水のなかの目」だ。物語の設定も強烈で、登場してくる事件や、人物たちも今までになく残虐性にあふれている。どこかコメディ要素も垣間見えた今までの作品に比べて、明らかに異質な印象をもった。さらには、ボディーガードとして登場してきたミナガワの哀愁漂う描写。ミナガワの行動や、その最後を読むと、なんだか無性にやりきれない気分になった。現実に起こった凄惨な事件を思い起こさせるような描写や、切れた少年たちなど、心に強く残るのは間違いなく本作だろう。

「水のなかの目」のラストの展開はまったく予想外だった。



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