平成お徒歩日記 宮部みゆき


2009.7.14  歴史は好きか? 【平成お徒歩日記】

                     
■ヒトコト感想
旅エッセイとでも言うのだろうか。いや、お散歩エッセイか。歴史的事実に基づいて、江戸時代の出来事をたどるように、現代の町を歩く。東京近辺が多く、場所的になじみはあるのだが、どうにもはまれなかった。その理由は、ベースとなる歴史的事実を知ってはいるが、場所まで意識して考えたことがなかったからだ。ここが、赤穂浪士のたどった道だと言われても、罪人引廻しのルートだと言われても、いまいちピンとこない。あたりの風景を語られ、江戸時代と現代の違いを面白おかしく語る。その手の歴史に興味がある人にとってはたまらないのだろう。しかし、興味がなければ、ただマイナーな観光地を観客の理解を無視して淡々と語っているように思えた。後半では食事などで多少その雰囲気がやわらいだが、それでもある程度知識がないとほとんど楽しめないといってもいいだろう。

■ストーリー

あるときは赤穂浪士のたどった道、またあるときは箱根越え、お伊勢参りに罪人引廻し、島流しルートも。暑さにも寒さにも原稿締切にも病にも負けず、ミヤベミユキはひたすら歩く歩く―。怪しき道づれたちと繰り広げる珍道中記を読むと、あ~ら不思議、あなたも江戸時代へタイムスリップ。

■感想
箱根越えやお伊勢参り、島流しルートなど、どこかで聞いたことはあるが、それらにとりたてて深い執着はない。作者が汗だくになりながら、ひたすら徒歩で歴史的事実を解説する。確かに歴史ファンにはたまらないのだろう。現に、同じルートをたどる歴史ファンも多いという描写もあった。そうなってくると、歴史ファンにとっては需要があり、もしかしたら「待ってました」と言わんばかりの作品なのかもしれない。ただ、まったく興味のない人にとっては、ただマニアックな観光地をひたすら回っているだけにしか見えなかった。

作者の歴史物は好きだ。深川をテーマとした作品も面白いものがそろっていると思う。だからといって、本作を気に入るとは限らない。創作として江戸の町並みを頭の中に想像するのは簡単にできる。そして、物語の中にどっぷりと浸かり、楽しむこともできる。しかし、そんな江戸の町並みを現代のどのあたりかと解説され、あたりを散策されたからといって、たいして興味はわいてこない。ここが因縁の場所ですとか、この道を四十七士が歩いたのかと言われてどう思うか。はっきりいって興味がなければ、面白くもなんともないのだろう。そのあたり歴史的知識が欠落している人にとっては厳しい作品かもしれない。

後半になると、歴史だけでなく、その土地の名物を食べるという描写もでてくる。そうなってくると作者も言っているように、まさしくグルメ紀行でしかない。作者の人となりがそれなりにわかってくるというのは価値があるのかもしれない。ほとんどエッセイを書かない作者だけに、ファンにはうれしい部分なのだろう。しかし、本作のメインは歴史と現代とのリンクなので、歴史的知識は必須だ。ただのグルメ紀行として読むにはもったいないような気がした。そのあたりをよくわからずに読んだぼくがもともと悪かったのだろう。

作者のファンならば読んでもいいかもしれない。



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