鳩笛草-燔祭/朽ちてゆくまで- 宮部みゆき


2009.7.20  長編が読みたかった 【鳩笛草-燔祭/朽ちてゆくまで-】

                     
■ヒトコト感想
超能力をテーマとした3つの作品。一番印象に残っているのは「朽ちてゆくまで」だ。古びたビデオに写るのは自分の子供時代。それが、なにやらわけのわからないことを口走った映像で、実は未来を予言していたとわかる。何か大きな秘密がありそうな流れ。両親の死の理由も何か予言にまつわるものかと想像していたのだが、意外にあっさりと終わった。本作はどれも超能力がテーマとなっており、それは作者の得意とするところなのだろう。長編作品へと続くものもある。なんだか引き込まれる雰囲気なのだが、短編ということもあり、あっさりと終わっている。もう少し、こねくり回して楽しませてくれてもよかったのではないかと思った。

■ストーリー

他人の心を読むことのできる女性刑事・本田貴子は、その能力ゆえにさまざまな試練に直面し、刑事としての自分の資質を疑ってゆく…。(「鳩笛草」)高校生の妹を殺害された兄に代わって報復の協力を申し出た青木淳子。彼女は、人や物を念じただけで発火させてしまう能力を持っていた…!(「燔祭」)

■感想
「朽ちてゆくまで」が一番印象深かった。それは何故かと考えると、手がかりが謎の古びたビデオだけで、子供時代に予知能力をもっていたという事実が明らかになった部分だ。物語的にはこの予知能力の部分が大きく関わってくるのかと思いきや、何の変化もなく終わってしまう。なぜ予知能力が消えたのか。両親が事故にあった理由は?祖母が説明してれなかったわけは?大きな謎を残しつつ、物語は終わっていく。両親がビデオの内容をその後の現実の出来事と結びつけられた理由もはっきりしない。最初のインパクトからすると、どうにも消化不良に感じた。

「燔祭」は、長編へと繋がる作品なのだろう。念じただけで発火させるという能力は面白いが、結局特殊なことをやるわけでもなく、ただ復讐の手助けをしているだけだ。それにくらべると「鳩笛草」はいろいろな要素がつまっており、楽しめるのだが、根本的には平凡な印象をうけた。他人の心を読むことができる能力。刑事という職業に活かすのはわかる。そして、その能力がきっかけとして、さまざまな事件が解決していく。能力がある上での苦労も多少語られているが、なんだか平凡な超能力作品に感じてしまった。

超能力ものは作者の得意分野かもしれない。いろいろと面白い作品もでている。ただ、それは長編になった場合の話しで、本作のように短編の場合は、しっかりとした素材が用意されているのに、それを料理する味付けがいまいちのような気がした。煮込み方がたりないというか、後一品何かパンチを与えるものを付け加えれば、とんでもなく興奮する作品になりそうな気がした。短編ということもあり、長さ的な制約でそうなったのだろう。

この手のテーマの長編は間違いなく面白いのだが…。



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