2010.6.4 精巧な偽札を作れるか? 【奪取 上】
■ヒトコト感想
ヤクザからの借金を返すために偽札作りを実行する。それも両替機に読み取らせることをメインとした偽札作りだ。紙幣の読み取りがどのようにして行われているのか。あまりに詳しく書きすぎると、どこからかクレームがくるのではないだろうか。それほど細部にまでしっかりと描写されているような気がする。はっきり言えば、この理論があっているのか、間違っているのかわからない。ただ、細かなセンサーの説明をされると、それらしく感じてしまう。主人公がこれほどの労力をマジメに別のことに使えば、立派な社会人になれるのに、ただの才能の無駄遣いだと思う人も多いだろう。一見無謀で、無茶なことに挑戦するというのが物語を面白くしている。
■ストーリー
1260万円。友人の雅人がヤクザの街金にはめられて作った借金を返すため、大胆な偽札作りを2人で実行しようとする道郎・22歳。パソコンや機械に詳しい彼ならではのアイデアで、大金入手まであと一歩と迫ったが…。
■感想
偽札作りの描写は、わりとコンピュータ関係に詳しいつもりだったが、理解できなかった。これほどまでの労力をかけるのならば、何も不確実な偽札作りに走るよりも、別の道を見つけるべきだろうと、とっさに思ってしまった。それほど複雑で高度な解析と、トライアンドエラーを繰り返しての偽札作り。精密な分析とはうらはらに、実行計画は穴だらけだ。謎の老人に気付かれ、ヤクザたちにも感づかれる。このあたりは、アクション映画さながらに、偽札というおいしい獲物を求めた様々な者たちが動き回る。
上巻では、コンピュータに認識させるだけの偽札作りから、どこからどう見ても本物としか見えない精巧な偽札作りを目指すことになる。本作を読むと、普段自分たちが身近で使っている紙幣というのは、何年も前に決められた印刷技術で、誰もがマネできないようなものを作り上げている。よく考えたらすごいことで、そのすごさが本作を読むことで実感できる。ただ、どうしても心にあるのは、何年も前の最新技術を集めた印刷物だとしても、技術の進歩でいずれ精巧な紙幣を作る技術が登場するのではないか。いや、すでに簡単にできるのかもしれない。と思ってしまった。
本作はおよそ十年前の作品だが、偽札にかける男たちの執念が描かれている。おいしい獲物を逃すまいとするヤクザたちと、印刷工場を存続させるために、偽札作りに心血を注ぐ男たち。一人警察に捕まった雅人が何か大きな役割を果たしそうだが、どうなるかまったく想像つかない。紙幣を作るには、市場に出回っていない紙の材質が必要となり、必要な印刷機器は、どこにあるかというのをすべて国家権力に抑えられている。ここまで徹底したガードをどうやって突破するのか。手触りまですべてを精巧に作るためには、想像以上に難しいことだというのはよくわかった。
偽札作りなんてことは考えたこともないが。今の技術ならばすんなりできるのではないだろうか?
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