チョコレート


 2010.12.23  精神にかなりくる 【チョコレート】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
重く苦しい物語だが、どこかクラッシュを思わせる流れだ。憎み悲しみ、そして愛し合った者たち同士に思わぬところでつながりがある。違うのは、クラッシュは観衆を含めてその繋がりが突然明らかになるのと比べて、本作は観衆に限っては最初から繋がりに気付いているということだ。人種の坩堝であるアメリカだからこそありえる物語なのだろう。保守的な土地ということと、息子や夫との関係など、ちょっとした行き違いから大きな溝へと広がっていく。ほんの少しのひずみが大きくなると取り返しのつかない事態となる。最初は意味がよくわからない場面であっても、のちに大きな理由があるということに気付く。脚本としては非常によくできた作品だ。

■ストーリー

保守的なアメリカ南部、ジョージア州のある町。黒人に偏見を持つ刑務所の看守ハンク(ビリー・ボブ・ソーントン)と、そこで処刑された死刑囚の妻だった黒人女性、レティシア(ハル・ベリー)が出会う。それぞれ息子を亡くした2人は、その穴を埋めるかのようにお互いを求め合い始めるが、レティシアは、ハンクこそ自分の夫の死刑を執行した男だと知らない…。

■感想
黒人に偏見を持つハンクは、父親の影響が強く過ちであるという気持ちが強いのだろう。息子を亡くしたとき、どのような後悔がハンクの心を覆っていたのか。その後のハンクの行動から読み取れるのは、取り返しのつかないことをしたという思いばかりだろう。その強い後悔の念が、父親への対応に繋がったのだろう。保守的な土地で父親に対してすべてを諦めるハンク。レティシアという心の支えを得たはずのハンクにとっては、この世界の見え方が一新する出来事なのかもしれない。

死刑囚とハンクの関係が最初はよくわからなかった。なんのために死刑の予行演習をしていたのか。黒人に偏見を持つはずのハンクが死刑囚のためにしようとしたことは…。その意味はハンクの息子に対する行動を見れば明らかとなる。ハンクは最初から黒人に対して偏見などいっさい持っていないということがわかった。ちょっとした誤解から、物事は修正のきかない方向へと流れてしまう。ハンクとレティシアの関係は、ある繋がりが判明したとしても、それは乗り越えられるのではないかと思えてしょうがなかった。

物語全体がどこか陰鬱で閉塞的で息苦しい印象がある。それは登場人物たちにとって決して明るい方向へと進んでいるわけではないことと、残酷な出来事が次々と降りかかってくる現実を表しているのだろう。強烈過ぎる出来事の数々。かすかな幸せさえもすべて覆いつくしてしまうほどのインパクトだ。暗くざらついた雰囲気が見る人の精神状態によってはかなり人の心を悪い方向へと導いてしまうかもしれない。脚本的には非常に練り込まれており、見ごたえはあるが危険な作品であることは間違いない。

良い意味でも悪い意味でも人を惹きつける何かがある。



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