2010.11.1 人としての境界線を越えた男 【ボーダーライン】
■ヒトコト感想
人としての境界線という意味でのボーダーライン。確かにボーダーラインを越えた男を追いかけるストーリーなのだが、メインは違う部分に感じた。ロサンゼルスの日系企業で働く探偵が、アメリカで調査する際にぶつかる様々な問題や、人種的な差別など、探偵としての苦労が描かれている。天使の笑顔を浮かべながら銃を乱射する男を追い求め、家族との関係や、日本人ならではの考え方などが複雑に絡み合い物語は進んでいく。わりと一本調子で、どんでん返しやミステリー的なトリックはない。大きな驚きがないかわりに、人のあり方と人は生まれながらにして善なのか悪なのかを考えさせられる作品かもしれない。人としての境界線を越えた人は、現代には沢山いるような気がする。
■ストーリー
ロサンゼルスの日系企業で働く探偵のサム永岡は、一人の若者を探すように命じられた。国境に近い町で見つけた彼は、天使のような笑顔を見せながらいきなり発砲してきた―。人としての境界を越えた者と、そんな息子の罪を贖おうとする父親。ふたりにかかわった永岡もまた、内なるボーダーラインを見つめる…。
■感想
凄惨な事件が起きると、その人の生い立ちから親の育て方まで、すべてを分析しなぜこのような人間になったのかを調査する。よくあるパターンだが、日本ではかならず親の育て方というのが大きな意味を持ってくる。それだけ親子関係が大きなウェイトを占めており、親子関係がある意味犯罪の抑制に繋がっているのかもしれない。本作では、そんな日本人的思考を持った探偵が、ある依頼を受け、天子の微笑を持つ男を追いかけるというストーリーだ。作者の純粋な探偵物というのは珍しく、それだけにいつもと違った雰囲気が感じられた。
探偵である日本人でもあるサムがアメリカで日本人を探す。その際に様々な問題に直面する。上からの圧力や、人種的な問題。アメリカでは探偵になるためにライセンスが必要であり、それを取得するには厳しい試験を勝ち抜かなければならないというのは初めて知った。探偵であるサムが、人が犯罪を犯す心理を分析しながらも、過去、犯人と目の前で話をしながら気付くことができなかったことに悔やむ。サムのトラウマと、子供を思う親の気持ちなどが混ざり合い、すんなりと進むはずの調査がなかなかうまくいかなくなる。
境界線を越えた人間というのが、どのような行動をとるのか。すぐさま感じたのは、そんな人間が逮捕されずに野放しにされているという恐怖と、恐怖で人を支配することができるのかということだ。サムが調査し、息子の罪を償おうと必死になる父親。犯人を追い詰めながらも、別の方向から犯人と接触しようとする父親の存在など、一筋縄ではいかない展開となっている。人は生まれながらにして、犯罪という行為をどこまで認識しているのか。犯罪はダメだという意識を植え付けられた、その瞬間から悪の存在がある。なんだか、ものすごく哲学的な命題を突きつけられたような気がした。
すべてがフィクションなのだろうが、ボーダーラインを越えた人というのは、恐ろしい。
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