ブラックブック


 2009.10.1  女はしたたかだ 【ブラックブック】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
第二次世界大戦における、ドイツ占領下のオランダが舞台の作品。様々な要素が詰まっており、ミステリー的な面白さもある。戦時下での激しいユダヤ人への迫害や、ドイツ軍の横暴。ラヘルの行動がどのような影響を与えたのかわからないが、この時代ならでわの理不尽さというか、恐ろしさを感じてしまった。戦局が変われば、立場も変わる。軍の将校たちではなく、将校たちの愛人たちのほうがしたたかに感じた。戦局の変化に柔軟に対応し、勝ち馬に乗る。事件の黒幕にはかなり驚かされたが、女たちの変わり身の早さにも驚かされた。この時代ならでわの雰囲気と、閉塞感。ドイツ軍とユダヤ人だけでなく、オランダにも多大な影響力を及ぼしていたと初めて知った。

■ストーリー

1944年、第二次世界大戦時ナチス・ドイツ占領下のオランダ。若く美しいユダヤ人歌手ラヘルは、ドイツ軍から解放されたオランダ南部へ家族とともに逃げようとするが、何者かの裏切りによって家族をナチスに殺されてしまう。復讐のために名前をエリスと変え、ブルネットの髪をブロンドに染め、レジスタンスに身を投じる。そしてナチス内部の情報を探るため、ナチス将校ムンツェに近づき、彼の愛人となることに成功するが…。

■感想
戦時中のオランダがこれほどドイツ軍の影響を受けていたとは知らなかった。ユダヤ人迫害は良く知られているが、オランダでのレジスタンスなど、まったく頭の中にはないことだった。終戦間近ということで、終戦後の身の振り方を考える将校たちに、人のずるさを感じつつも、当時はそうだったのだろうと、変に納得できてしまった。ドイツ軍の将校が普通にベルリン陥落と言うあたり、そのころのドイツ軍というのがどういう状況だったのか、容易に想像できる部分だ。そんな中でも、将校に近づく女たち。一番したたかなのは、この女たちだというのは紛れも無い事実だ。

本作は、戦時中のオランダの状況だけでなく、様々な要素が絡んでいる。どの程度事実とリンクしているかわからないが、物語としては面白い。すべてを裏であやつっていた裏切り者は誰なのか。ミステリー的な要素として、しっかりと成立している。終戦後、レジスタンスが英雄となり、ドイツ将校がユダヤ人から奪い取った金品を持って逃亡しようとしたり。複雑に絡みあう人々は、物語が二転三転する中でまったく気をぬく暇がない。盛者必衰の理どおり、世渡り上手なものだけが、生き残るすさまじい世界だ。

歴史的事実がどの程度まで反映されているのかわからない。しかし、ユダヤ人として生き残るために、様々な環境に身をおき、時には自分を犠牲にしてまでレジスタンスの力になろうとする。風見鶏のように戦局を見て行動する女とはまた違った雰囲気をかもし出しているラヘル。やはりどうしても感じるのは、華やかなパーティが催されたかと思えば、終戦後、とたんに捕虜となる境遇という部分だ。これは戦場のピアニストを見たときにも感じたことだが、そんな世界で生き残るには、ラヘルの境遇はあまりに不利すぎると感じた。

戦時中は生きるためにドイツ将校につき、戦後は姿を隠して生きる。なんだか大変な人生だと思った。



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