案外、買い物好き 村上龍


2010.12.4  青いシャツにとことんこだわる 【案外、買い物好き】

                     
■ヒトコト感想
作者の買い物遍歴というか、さすが売れっ子作家だけあって買い物も一般人とは違う。特にイタリアでのシャツに対するこだわりには圧倒されてしまう。青いシャツばかりを何枚も買い、それにあうネクタイや靴も買う。なんとなくだが、安易なイタリアかぶれのようにも思えた。その他の国でもそれなりに買い物はしているが、メインはシャツだ。本作自体、かなり前のエッセイが収録されている関係上、中田がペルージャにいたころの話から始まっている。10年以上前からシャツを買い続ける。こだわりはすばらしく、一般人との違いを見せ付けている。ただ興味を持ったのは買い物よりも、作者が作品を作り上げるために箱根に山篭りをしていた、というくだりだ。

■ストーリー

「わたしは全くオシャレには向いていない。昔から興味がなかった」。なんと24歳で初めてネクタイをしめたという村上龍が、イタリアでスーツにシャツにネクタイ、靴に目覚めた。ミラノ、ローマ、ハバナ、ソウル、上海。飼い猫の冷たい視線も、中田英寿さんのあきれ顔もものともせず、神出鬼没に買い物道を驀進する!思わず噴き出す痛快エッセイ。

■感想
昔はまったくファッションに興味がなく、買い物もしなかった。そんな作者が買い物について語る。特にイタリアでの激しいシャツの買い方には圧倒されてしまう。そんなに買っていったいいつ着るのだろうかと思うが、買い物するということが重要なのだろう。それはなんとなくわかる気がするが、どうせならせっかく気に入って買ったシャツなので、どこかで着たいと思うだろうし、誰かに見てもらいたいと思わないのだろうか。どうやら「カンブリア宮殿」では自前のスーツとシャツらしいので、こんどから気になって見てしまうかもしれない。

サッカーの中田と仲が良い作者。あまりにイタリアかぶれしすぎではないかと思えるほど、イタリアのシャツを愛している。どの程度の着心地か、デザインが好きなのか知らないが、そこまで熱を上げるほどのものだろうか。本作を読むと、もしイタリアに行ったとしたら思わず青いシャツを買ってしまうかもしれない。その他買い物についての作者の思いが描かれているが、ほとんど印象に残っていない。沢山シャツを買うということと、一般人では想像できない金の使い方をするのだなぁという、さすが売れっ子作家だというイメージばかりが残った。

買い物以外では、作者が作品を執筆するために箱根に篭るというのは少し以外だった。もっとスマートに都内の高級ホテルにカンズメとなるのかと思っていたら、自分で食材を買い、箱根の別荘で料理をして執筆に集中するらしい。イタリアブランドのシャツを買いあさったかと思うと、短パンTシャツで箱根に篭る。このギャップが最も印象的かもしれない。中国やキューバの話もでてくるが、自由気ままな作者の生活がうらやましくなるばかりだ。もちろん、みえないところで苦労はあるのだろうが、処女作をミリオンセラーし、その後三十年近く売れ続けている作家というのは、とてつもない才能を持っているのだと感じた。

どうしても感じるのは作者のセレブ感だが、作者自身はそのことに気付いていないだろう。




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