アヒルと鴨のコインロッカー


 2009.9.7  原作をうまく映像化 【アヒルと鴨のコインロッカー】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作はキモとなるトリックに驚き、独特の雰囲気を楽しむことができた。この原作を映像化するのは難しいと思っていたが、実際にはうまい具合に原作の面白さを損なわずに映像化されている。しかし、このキモとなるトリックに気付いたとき、あっと驚き、その巧妙な仕掛けを楽しむことができなければ、なんだかよくわからない映画という印象をもつだろう。物語としては、実はたいしたことが無い。というか、よくわからないかもしれない。独特な台詞回しと、不思議なキャラクターたち。原作の雰囲気をよくだしてはいるが、それが気に入らない人もいるかもしれない。原作ファンならば見ても間違いないだろう。それ以外の人が見るには…、ハードルは高いかもしれない。

■ストーリー

大学入学のために仙台へ引っ越してきた椎名。新居の片づけをしていると、同じアパートの河崎と名乗る男が声をかけてきた。口ずさんでいたボブ・デュランの曲に興味を持ったらしい。しかし、彼は初対面の椎名に、同じアパートに住むブータン人のドルジという青年に広辞苑を盗んでプレゼントしたいから「本屋を襲わないか?」と誘う。ドルジは河崎の元彼女の琴美と付き合っていたらしい。また買うのではなく盗むのが大切だと奇妙なことを言う河崎。 椎名は逃げ腰だったが河崎の巧みな話術にのり、気づいたら本屋襲撃に加担していた!

■感想
冒頭からなんだかよくわからない、奇妙な出来事が起きる。キャラクターもつかみどころがないというか、どこか不思議で、言動もおかしい。しかし、その理由は後になればはっきるする。この大きなトリックに驚き、壮大なカタルシスを得ることができれば、物語は面白くなる。原作では可能であったことでも、映像化するには不向きだと言われていたが、かなりうまく表現している。その代わり回想を多様しているために、集中して見ないとわけがわからなくなる危険性もある。

原作ファンならば間違いなく楽しめるだろう。これが、原作ファン以外が見るとなると、一般的な娯楽映画からするとちょっと外れているかもしれない。独特な台詞回しと、キャラクターたち。ある事件が鍵となるのだが、トータルとして考えると物語としてはたいしたことがない。ある大きなトリックがあったからこそ、本作は成立していると思う。そのトリックに納得できるかできないか…。映画を見終わって「だから何なんだ」という感想を持つ恐れもある。金曜ロードショーなどのハリウッド映画に慣れた人には向かない作品だろう。

本作の主役を栄太が演じたことの意味を物語の後半で気づくだろう。これが非常に重要なことで、うまい配役だと思った。脇を固める俳優たちも良い味を出している。原作の面白い部分は十分に表現されていると思うが、原作ほど正しいことをやっているという気分にならない。原作は読み終わってから、なんだかわからない爽快感があったが、本作ではそれがない。なんだかぼんやりとしたまま終わってしまったという感じだ。

この手の原作を映画化したわりには成功していると思う。



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