4TEEN 石田衣良


2009.12.28  東京の中学生の青春 【4TEEN】

                     
■ヒトコト感想
月島に住む四人の中学2年生。どこにでもある青春物語を爽やかに描いている。重松清の青春物語とは違う、どこか都会的で華やかな印象が強い。それは重松清の田舎の中学生に比べ、作者の中学生は銀座や新宿の近くに住む、あかぬけた中学生だからだ。恐らく作者自身の経験にもとづいているのだろう。中学生ながらどこか洗練されているような、田舎の中学生では想像できないような出来事が描かれている。この手の作品に出会うと必ず自分の中学時代と比較してしまう。まず最初に思ったのは、やっぱり違うなぁということと、なんだかんだと金を使ってるんだなということだ。今となってはなんてことないが、中学生のときにこの作品を読んだら、都会に憧れる気持ちがかなり強くなっただろう。

■ストーリー

東京湾に浮かぶ月島。ぼくらは今日も自転車で、風よりも早くこの街を駆け抜ける。ナオト、ダイ、ジュン、テツロー、中学2年の同級生4人組。それぞれ悩みはあるけれど、一緒ならどこまでも行ける、もしかしたら空だって飛べるかもしれない―。友情、恋、性、暴力、病気、死。出会ったすべてを精一杯に受けとめて成長してゆく14歳の少年達を描いた爽快青春ストーリー。

■感想
昔でいうところの「ズッコケ三人組」的な印象をうけた。さながら現代版のズッコケ三人組で、さらに言うなら大人から見た中学生の形とでも言うのだろうか。本作に登場するテツローやジュンたちは、特別不良であるわけでもなく、マジメでもない。どこにでもいる平凡な中学生かもしれない。そんな三人が様々な出来事に遭遇し、冒険する。現実の中学生がこんなことをやっているとは到底思えないが、世相を反映しているようで、非常にわかりやすい。大人たちが読んで、東京の中学生の青春というと、まっさきに思い浮かびそうなシチュエーションの数々だと思った。

大人になった今では楽しく読める。自分の青春時代とはまったく重ならないが、心だけは中学生に戻り、冒険している気分になる。月島と言えども銀座や新宿が近く、どこか都会的な雰囲気をかもし出している。四人の友情物語というよりも、東京の中学生のちょっとした冒険物として読んだ方が良いだろう。田舎の中学生にはない青春。もし、自分が中学生に戻り東京に住んでいたとしても、同じようなことは絶対にしないと思うが、それでもワクワクしてくる。

四人のキャラクターがある意味定番的だ。メガネとデブと金持ち。普通は中学生と言えどもグループ内にそれほど貧富の差があるはずがない。しかし、本作では金持ちのナオトに嫌味な雰囲気はなく、貧乏なダイに卑屈な想いはない。それぞれがどこか欠けたおり、お互いが補完しあうような関係なのかもしれない。読んでいる間中思ったのは、中学生のくせになんて大人な対応をするんだということだ。中二らしいイキガリや変なプライドもなく、非常に素直だ。そのあたりが、内容は爽やかではないのにこの青春物語を爽やかにしている要因だろう。

なんだかんだと言っても東京の中学生はこんなにも楽しいことをしているのか、とうらやましくなった。




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