2days 4girls 村上龍


2008.9.2  村上春樹っぽい不思議な世界 【2days 4girls】

                     
■ヒトコト感想
夢か幻か、不思議な世界と現実の回想をいったりきたりしながら、回想シーンで壊れた女をオーバーホールする過程を描いている。どことなく不思議な世界の雰囲気は村上春樹っぽくもある。かと思えば現実の回想シーンでは、相変わらずの裕福な男がSM的なものに取り付かれた女たちとオーバーホールという名の関係性を築いている。金に不自由しない男が高価なワインを飲み、ファーストクラスで海外旅行をし、高級レストランへ通う。女たちもそれに慣れていく。いつものことなのだが、この手の主人公の思いが淡々と語られている。四人の女それぞれの特徴を事細かに説明しながらも、やることは結局ほとんど変わらない。不思議な世界との関連もいまいちよくわからなかった。

■ストーリー

心が壊れて捨てられた女たちを預かり、「オーバーホール」することがわたしの仕事だ。そして今、一人の女を捜して、広大な庭園をさまよっている。「明日からここに住みます」というメモを残してその人は姿を消した。彼女を譲り受けた頃、わたしには他に三人の女がいた…。官能を仲立ちに、人間はどこまで深くお互いに関与できるのか。男と女の関係性を問いかける、救済という幻影の物語。

■感想
男と女の関係性を救うのがオーバーホールなのだろうか。基本的には男が金に関しては不自由のない生活をしているので、現実に当てはめることはできない。女をオーバーホールするには、高価なワインを飲み、高級レストランで食事をして、ファーストクラスで海外旅行に行くことが必要なのだろうか。本当に心から相手との関係性を築こうとしているようには到底思えなかった。ただ、これが作者の意見であり、考え方なのだろう。前からうすうす感じてはいたことだが、基本の思考回路がセレブなのだろう。そのところを理解しないと到底ついてはいけない。

現実世界と対比するように不思議な世界の中でさまよう男。脈略のない世界なのだが、村上春樹的雰囲気をあちこちに感じることがある。そこには特別な意味合いはないのだが、何か気になるものとしてずっと心に残っている。最終的には結論をださず、不思議な世界がいったい何だったのかということを明らかにすることはない。最後に全てが明かされると期待して読んでいた人には、消化不良に感じるだろうが、村上春樹の作品に慣れている人には、こんなことはどうってことない

男がオーバーホールした女は四人。彼女たちは容姿端麗で恵まれた生活をしていながら、どこか壊れた世界へと足を踏み入れている。この壊れ具合が妙にリアルで、現実にいそうなことが怖かった。表面上は普通にしていても、心の奥底にはある隠れた何かを持っており、ある出会いをきっかけにして、それが表へでてくる。オーバーホールする前は、明らかに壊れたような表現の仕方だが、精神的な病というほかないような表現だった。それを関係性を築くことで回復させることが本当にできるのだろうか…。

いつものように男はセレブで綺麗な女たちが周りに群がる。この手の作品を新鮮と感じるかどうかが、評価の分かれ目だ。



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